世界180カ国から1日に6600万人がアクセスし、平均約3時間を過ごすというコミュニケーションプラットフォームが「ロブロックス(ROBLOX)」だ。誰もが無料で遊ぶことができるプラットフォームで、制作したコンテンツ(主にゲーム)の公開や、専用通貨を介してデジタルアイテムの売買も可能。2014年に米国で設立され、米国で若年層を中心に爆発的にユーザーを獲得して、21年3月にはニューヨーク証券取引所に上場した。
「ナイキ(NIKE)」や「グッチ(GUCCI)」「ヴァンズ(VANS)」、ビューティの「ジバンシイ(GIVENCHY)」などが常設ワールドを構え、「ナーズ(NARS)」が期間限定でコンテンツを提供する同プラットフォームについて、ファッション、ラグジュアリー、ビューティとリテールパートナーシップの責任者を務めるウィニー・バーク(Winnie Burke)に聞いた。
WWD:数あるメタバースプラットフォームの中で「ロブロックス」の優位性はどんなところにあるか?
ウィニー・バーク=ロブロックス ヘッド オブ ファッション・ラグジュアリー・ビューティ&リテールパートナーシップ(以下、バーク):主に2つある。1つ目はユーザー生成コンテンツ(UGC)に注力している点だ。あらゆるエクスペリエンスの制作エンジン「ロブロックス スタジオ」は簡単に習得可能な無料ツールで、世界中の何百万人もの開発者やクリエイターが活用している。現在3200万以上のユーザーが生成したワールドがあり、あらゆるユーザーの好みに対応できる。2つ目はソーシャルなつながりを重視している点だ。有意義かつ心に残る形で、没入型3D環境の中でやり取りが可能だ。これらによって1日に平均6600万ものユーザーが時間を過ごしており、多様なコミュニティーができている。ブランドにとっては、これまでにない革新的な方法で新たなオーディエンスに訴求できる場になっている。
WWD:「ナイキ」が21年11月に公開した「ナイキランド」は、ユーザーがさまざまなミニゲームや「ロブロックス」のツールキットを使って自分のミニゲームを作ることもでき、多くのアクセスを集めた。メイクをしてコンテストに参加したりできる「ジバンシイ ビューティ ハウス」や、スタイリングを通して自身のデジタルアイデンティーを模索するH&Mの「ループトピア」など、さまざまなバーチャル体験ができるワールドが常設されているが、最近のファッションやビューティ関連での成功事例は?
バーク:昨年9月にニューヨークで行われた「キャロリーナ ヘレラ(CAROLINA HERRERA)」のショーでカーリー・クロス(Karlie Kloss)が着用した花柄のドレスを「ロブロックス」コミュニティークリエイター、ラブスパン(@Lovespun)が3Dデジタルドレスとして再現したコラボレーションだ。わずか4時間の限定販売で500ロバックス(約1000円)のアイテムが432着売れ、その後“リミテッド”アイテムとして、特にレアで入手しにくいものになった。発表から1週間のうちに、数千ドル(数十万円)に相当する価値で転売が繰り返された。
カーリー・クロスは今年3月にスタイリングやファッションデザインに挑戦し、同じようなクリエイターと交流できる「ファッション クロゼット」を開設したが、3カ月間のアクセスは1900万回に届く勢いだ。
WWD:「ナーズ」も昨年7月に90日間限定で「ナーズ カラークエスト」を公開して4100万人以上の参加を記録したという。第2弾を今年6月に実施していたが、うまくいくための秘訣は?
バーク:一貫して推奨しているのは、「ロブロックス」コミュニティーの声に耳を傾け、そこから学ぶことで、共有体験を向上させることだ。実店舗や製造拠点を開設することなく、世界中の新たなオーディエンスに簡単に訴求でき、ブランドやデザイナーが斬新なコンセプトを具現化し、そのデザインを現実世界で発売する前に、実際のオーディエンスに対して試験展開できるところが、ブランドにとっての「ロブロックス」の魅力だ。
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