「ヌメロ ヴェントゥーノ(N°21)」を手掛けるアレッサンドロ・デラクア(Alessandro Dell'Acqua)=クリエイティブ・ディレクターが来日した。滞在中は、4月に福岡大名ガーデンシティにオープンした新たな路面店を訪れたり、東京・表参道で来日記念パーティーを開催したりするなど、久しぶりだという来日を楽しんだ。デラクア=クリエイティブ・ディレクターは80年代にデザイナーとしてのキャリアをスタートさせて以来、フェミニンでセンシュアルな表現を得意とする。あらためてフェミニニティーの解釈や、コロナ禍を経て思うことなどについて聞いた。
WWD:「ヌメロ ヴェントゥーノ」が大事にするフェミニニティーの表現にはこれまでどんな変化が?
アレッサンドロ・デラクア(以下、デラクア):現在の女性は、自分が求めるものを熟知している。周りからどう見られるかよりも、その服を着て何を感じたいかを大事にしている点が過去との大きな違いだろう。つまり現代においてフェミニニティーとは、様式ではなくアティチュードだと思う。コレクションでは女性らしい柔らかなシフォンの40年代風のドレスに、あえてハードなレザーのジャケットを組み合わせるなど、私自身「ヌメロ ヴェントゥーノ」を始めてからフェミニンとマスキュリンの自由な掛け合わせを楽しむようになった。いわゆる完璧な女性らしさから少し間違っているくらいのバランスが気に入っているんだ。
WWD:2023-24年秋冬コレクションでは、強い女性像よりも弱さや儚さを表現している印象を受けた。
デラクア:女性の儚さは官能性の一部でもあると思う。私がランウエイに送り出す女性たちは、もちろん自信に満ち溢れているが、それはアグレッシブな意味ではなく、自分の弱さまでも表現できる自信だ。前回のコレクションは、60年代のミケランジェロ・アントニオーニの映画に登場する女優に着想を得た。カーディガンのボタンを掛け違えていたり、スカートのファスナーを締め切らないまま出てきたようなスタイリングは、さっきまで愛する男性とベッドにいたのにその場を去らなければいけないシーンの苦い気持ちを表現した。私が描く女性像は、一つには絞れない。常に女性の多面性を意識しているからだ。
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