ファッション

「ディオール オム」2017年春夏パリ・メンズ・コレクション

REPORT

クチュリエによる“破壊”に、無邪気とトレンドが加わった

 「ディオール オム」らしいメンズを目指し、スタイルの根幹をフォーマルに設定。以降、メンズの伝統にオマージュを捧げながら、スーツを作り続ける生真面目なデザイナー、クリス・ヴァン・アッシュは半年前、クチュリエの刺しゅうなどによるクラフツマンシップでスーツに“破壊的装飾”を加え、優等生的デザイナーの隠れた一面を披露した。

 あれから半年、“破壊的装飾”は今回も健在だ。引き続き、クチュリエによるスーツへの刺しゅうはところどころほつれ、華やかというよりは野性味を増しているような印象。全面にハトメを打ち込んだスタイルも登場した。

 ただ今回は、そこにまるで子どものような無邪気な気持ち、そしてトレンディーなアウトドアムードをさらにプラスして、前回の“破壊的装飾”フォーマルには欠けがちだった、洋服を純粋に楽しむ気持ちのようなノンシャランな魅力を手に入れた。

 今シーズンのテーマは、移動遊園地。観覧車に乗って、メリーゴーラウンドから手を振り、ジェットコースターに絶叫した少年時代のような素直な気持ちで、スーツに装飾を加えていく。序盤は、パズルのように入り組んだサスペンダー、それはハーネスのように変化して、洋服のフォームを変えたり、袖の装飾と化したりの変化を遂げる。その後は、ホッチキス、綿あめのような白の刺しゅう、ハンドペイント、そして、ランダムに打ち込んだハトメにアウトドアブーツのシューレースをプラスするなどして、制約の多いスーツを自由奔放にアレンジした。

 カジュアルは、ボリュームたっぷりのモッズコートやMA-1、マウンテンパーカなど。終盤のGジャンには、バラを描いたレリーフを貼り付け、ムッシュ・ディオールへのオマージュは忘れない。

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