イギリス発のオンラインビューティショップ「カルトビューティー(CULT BEAUTY)」は、ありのままの体を愛そうというムーブメント「ボディー・ポジティブ」を支持することを目的に、画像のデジタル加工に反対するキャンペーン“キャント・リタッチ・ディス(Can’t (Re)Touch This)”を開始した。
2021年にTHG(THE HUT GROUP)が買収し急速に成長する同社は、英国の若者の間で摂食障害やメンタルヘルス疾患の問題が広がっていることを危惧。自社サイトやソーシャルメディア上で使用するモデル写真のリタッチ加工に制限を設け、画像を修正した場合はフォトグラファーに申告を義務付けるなど独自のガイドラインを制定した。さらに「カルトビューティー」のデジタルメディアとソーシャルチャンネルに使用する画像には「未修正」マークを表示する新たなシステムを構築した。
英国の慈善団体、メンタルヘルス・ファンデーションの調査レポートによれば、調査対象者のうち成人の35%、10代の31%が「自分の体型について恥ずかしく思う、もしくは落ち込むことがある」と回答している。また同国の小児科病院で摂食障害の治療を受けている子どもが過去3年間で2倍以上に増加しているとして同社は、「長い間社会や業界によって特定の体型や肌色が称賛されてきたことが、若者の摂食障害や不安症を加速させている」と指摘。今後、多様性や包括性がブランディングの最前線に位置するよう、あらゆる体型や体格、肌色を持つ人々を表現するビジュアルやキャッチコピーを使用するとしている。
また、今回のキャンペーンの一環として、イギリスのリシ・スナク(Rishi Sunak)首相宛ての公開書簡をメンタルヘルス・ファンデーションと連名で提出。体型やビジュアルの改良を目的とした加工を規制する新たな法案制定を求めた。書簡の中で、カルトビューティーのフランチェスカ・エリオット(Francesca Elliott)=マネージング・ディレクターは、「社会はこれまでスリムな体型や若さを称賛し、それに値しないものは完璧でないと否定してきた。 写真に映るシミ、シワ、セルライト、体毛などを当たり前のように修正してきたが、そのために私たちが本来の自分の体を否定しなければならないのは間違っていた」と訴え、業界全体に向けて法案を支持するよう呼び掛けた。
同社は、ルーク・エヴァンス(Luke Evans)議員によって提案された法案を支持している。この法案は現在国会で審議中となっており、採決されれば画像にデジタル処理を施しモデルの体型を強調した場合、全ての企業に申告が義務付けられる。