余剰在庫の買い取り事業を手掛け、アパレルの大量廃棄問題と向き合ってきたショーイチ(大阪)は今、買い取った衣料品のリサイクル事業も強化している。サステナブル意識の高まりの中で、衣料品リサイクルに関心を持つアパレル関連企業やブランドは増えているが、リサイクル工程にまわしたはずの自社商品が流出してブランド価値が毀損するようなことはないか、不安に感じているケースもあるだろう。ショーイチでは“安全な衣料品リサイクル”を掲げ、そうしたリスクの低減に力を注いでいる。
「外部に商品も情報も漏らさない」
そもそも、ショーイチの言う“安全なリサイクル”とは何か。それは、「外部に商品も情報も漏らさないこと」だと、ショーイチの山本昌一社長は話す。「リサイクル事業をする上で、商品や情報の流出リスクを失くすことを第一に考えている」という。ショーイチのもとに集まった衣料品をリサイクル工程にまわす前には、素材別の仕分けやタグのカット、ボタンなど副資材の分離を行う必要がある。それを外部の業者に依頼したり、作業のために衣料品を別の場所に移したりといったことがあると、その分情報や商品の流出リスクが高まり、ブランド価値の毀損につながりかねない。
その点、ショーイチは自社倉庫内で、自グループで運営する就労支援施設を活用して作業を完結させている。山本社長が自信を持って安全だと言い切るのは、こうした背景を整えているからだ。注意してほしいのは、「外部に商品も情報も漏らさない」と言っても、もちろん依頼主にはリサイクルした商品がどうなったかをしっかり伝えているという点。それにより透明性も担保している。
手作業でタグを確実にカット
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実際に、リサイクル前の作業が行われているショーイチの倉庫を視察した。倉庫の中の一角に、タグカットや副資材を分離する作業のためのコーナーがある。その日は、ショーイチのグループ内で運営する近隣の就労支援施設から、通所者と施設スタッフ合わせて計14人が作業をしに訪れていた。通所者はブランドタグや品質タグの一部をカットし、服から切り離したブランドタグそのものにも細かくハサミを入れてタグの悪用ができないように加工。リサイクル不可能な金属ファスナーやプラスチックボタンなどの副資材も、一つ一つ服から切り離す。作業内容に分かりづらい部分があれば、施設スタッフが通所者に丁寧に指示を出していたのが印象的だ。施設スタッフとショーイチ社員も、数時間ごとにコミュニケーションを取って状況を共有している。
リサイクル完了後には
詳細リストも提出
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タグや副資材を分離した衣料品の中でリサイクル可能なものは、ショーイチと提携する工場で素材として再生させる。ウール混率80%以上の衣料品は愛知・一宮のサンリードでリサイクルウールに。それ以外の繊維は大阪・泉大津の同心工業で反毛加工し、フェルトに変える。リサイクルが完了した証明として、産業廃棄物管理票などを取引先に提出する。さらに細かいデータとして、引き取った衣料品の品番、カラー、サイズごとに、何点をどこでどのようにリサイクル処理したかを明記した詳細リストも、取引先へ提出が可能。透明性を求める取引先に評価されている。
業界が循環型ビジネスに近づく一助に
ショーイチのもとに集まったリサイクル希望の衣料品は、こうした工程を経てしっかり再生されていく。実際に、ショーイチと組んで衣料品リサイクルを行っているブランドからは、「ショーイチのリサイクルは、どの商品が、いつ、どのように処理されたのかが明確で、証明書の対応や処理現場の視察などにも柔軟に対応してくれる。社会のサステナブル意識が高まる中、われわれはリサイクルの取り組みをさらに加速させていくが、ショーイチにはこれからも良きパートナーとして伴走してほしい」といった声が上がっている。「安心安全な衣料品リサイクルをショーイチが提供することで、ファッション業界の廃棄が少しでも減り、業界のビジネスモデルが循環型に近づいていく一助になれればと思っている」と山本社長。
ショーイチ
050-3151-5247
目指すは「アパレル廃棄ゼロ」