余剰在庫や顧客から回収した衣料品のリサイクルを目指すアパレルメーカーや小売企業は着実に増えているが、次の段階として、いま課題となっているのがバッグやシューズなどの服飾雑貨類のリサイクルだ。服飾雑貨は、レザーや合皮、ゴムなどを組み合わせて使用しているケースが多いため、繊維である服に比べてリサイクルが難しい。大阪を拠点に、アパレル関連のリサイクル事業を手掛けるショーイチ(山本昌一社長)は、まさにこの課題にも取り組んでいる。
2000万円かけて粉砕機を導入
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ショーイチがリサイクル事業でタッグを組む、反毛・粉砕工場の同心工業(大阪・泉大津)。同社の工場の一角に、ショーイチが借りている専用の建屋がある。取材で訪ねた際はブーツやパンプスのアッパー、スニーカーやサンダルの厚底ソール、ハンドバッグ、麦わら帽子などをまさにリサイクルしているところだった。それらをまずは粗く裁断した後、粉砕機にかけていく。粉砕機の下からは、すぐに色付きの粒がところどころ混じったグレーのわたが出てきた。レザーも合皮もゴムも全て細かく砕かれて、わたの一部になっている。このわたを圧縮してフェルトにし、自動車用などの工業資材にするのだという。
「困っている人の役に立ちたい」
同心工業のショーイチ専用建屋に、この粉砕機が導入されたのは2024年11月のこと。「導入には2000万円ほどかけた」とショーイチの山本社長は話す。「余剰在庫や古着といった、服のリサイクルを手掛ける企業であっても、バッグやシューズのリサイクルは行っていないというケースは多い。服飾雑貨のリサイクルには、硬い素材にも対応できる粉砕機を導入することが必要で、その分ハードルが高いのだと思う。でも、服の次は必ず雑貨のリサイクルが求められるようになる。雑貨のリサイクルで、どうすればいいか困っている方たちのお役に立ちたい」と山本社長は話す。
化粧品容器のリサイクルも一部を担う
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バッグやシューズと共に、化粧品のリサイクルも業界としては課題の一つだ。「化粧品の余剰在庫は基本的に量が多く、常に引き受けられるわけではない」(山本社長)が、ショーイチでは化粧品容器のリサイクル事業も一部を担うようになっている。具体的には、企業在庫である未使用品の回収、ラベルはがし、中身を出して簡易洗浄、素材ごとの分別の工程まで。舞台はショーイチグループで運営する就労支援施設だ。
同就労支援施設を訪れると、プラスチックの化粧水ボトルに貼られた商品名のパッケージやシールをブランドが毀損しないようにはがしてから、容器と中身を分け、容器を簡易洗浄する作業が行われていた。これらは手作業でしか行えないため、化粧品のリサイクルは進んでいないのが現状だ。ショーイチはこの手作業の部分を請け負って、業界の共通課題解決の一端を担い、同時に就労支援施設に仕事を作っている。
簡易洗浄したプラスチック容器は回収業者に渡し、業者のもとで再度ペレットからプラスチック製品に加工される。化粧水の中身は紙などに吸わせて、別途業者のもとでサーマルリサイクル処理を行っているという。
「中小企業だからこそ、
いち早く世の中の課題に対応」

(やまもと・しょういち)1978年生まれ、大阪府出身。大学在学中にネットオークションで物販事業をスタートしたことをきっかけに、在庫買取業に参入。2005年に法人在庫処分に特化したショーイチを設立。15年ごろからアパレルの大量廃棄が社会問題化したことでメディアへの露出が増加。現在、年間約3000社から4000万点の在庫を買い取っている。近年は衣料品のリサイクル事業に注力 PHOTO:SHINICHI YAMAGUCHI
「リサイクルの業界には、専業の大手企業もいくつかある。一方で、ショーイチはリサイクル専業ではないし、規模も中小だ。だからこそ、リサイクル大手がまだあまりやっていない分野にも挑戦して、いち早く世の中の課題に対応していくことが大切だと思っている」と山本社長。「ショーイチに頼めば、ブランドの毀損も防ぎつつ、服だけでなく服飾雑貨や化粧品のリサイクルも可能だということを広く伝えていきたい」。
ショーイチ
050-3151-5247
目指すは「アパレル廃棄ゼロ」