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「バーチャルマーケット」初のリアルイベント アバターと共同のスイカ割りやショットバー

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世界最大級のメタバースイベント「バーチャルマーケット2023 サマー」が7月30日まで開催中だ。今回は「ラスベガス」「福岡」「秋葉原」をバーチャル化したワールドを企業出展会場として開設。最多参加企業となったビームスのほか、日清食品や湖池屋、JRA日本中央競馬会、ロート製薬、オーロラ(傘)など70社超が出展している。毎回、さまざまなバーチャル体験を提供する「バーチャルマーケット」だが、今回は初めてリアル会場も設ける。29、30日の2日間、ベルサール秋葉原をメインに、ビックカメラAKIBAやHUB秋葉原店(通称秋HUB)などでイベントを実施。一体どんなことをするのか?「バーチャルマーケット」を主催するHIKKYの舟越靖最高経営責任者(CEO)に聞いた。

「バーチャル空間とリアルを繋ぐ際、僕らはバーチャル空間に(VRゴーグルを被ったりして)行けるが、バーチャル空間にいる人はリアルの場所には来られない。でも、バーチャル空間にいる面白い人たちがリアルの空間に現れたら、すごくいろいろな可能性が広がる。それを一般の人も楽しめるものにして、商業的にも使えるものにしたい」と舟越靖CEOは語る。

2023年のテーマは、“コネクト”。これまでバーチャル空間で、人と人、人とモノ、“パラリアルの街”として場所とも“繋がり”を作ってきたが、今回のリアルイベントでは、コミュニティーやクリエイター、企業と来場者を繋ぐだけでなく、バーチャル空間とリアル会場を繋いで、新しい“コネクト”を実現する。

「僕らが今まで培ったバーチャル空間での集客力やビジネスへの活用は、現実(リアル)にも活かすことができる。しかし、リアルで利用するには、もっとレベルを上げ、僕らがいなくても使えるくらいのソリューションにしなくてはいけないと考えた。そこで1度僕らがそれを作って、 僕らのイベントとして展開し、消費者に本当に手ぶらで来てもらって、メタバース体験を楽しんでもらおうと考えた。会場周辺の飲食店なども巻き込むことで、街ごとバーチャルの世界とコネクトして、『バーチャル空間に行ってください』だけでなく、バーチャル空間からこちらにアクセスできるようにする」。

メイン会場のベルサール秋葉原の1階にはバーチャル空間と連動したゲームなどのさまざまなコンテンツが楽しめるブースや、出展企業が並ぶカンパニーエリア、巨大フォトスポット、物販コーナーなどを展開。地下1階にはリアルとバーチャル両方で活躍する次世代クリエイターによる「パラリアルクリエイターエリア」や、私立VRC学園などVR内コミュニティーによる「バーチャルコミュニティエリア」を設ける。また、ステージも設置し、リアルマグロ解体ショーや、アニソン縛りのDJ&ライブなどを行う。

さまざまなブースが並ぶようだが、正直、どのようにリアル会場とバーチャル空間をつなぐのか、想像がつかない。舟越CEOに聞いた具体的な見どころは以下の通り。

チャットGPT搭載AIキャラクターとの会話体験

ボックスの中にホログラムのように映る「Vketちゃん1号」を設置。話題のAIチャットボット、チャットGPTを搭載しており、話しかけると返事をし、「バーチャルマーケット」について説明してくれたり、音声での会話を楽しめたりする。

バーチャルワールドと繋がる大型画面

大画面に映るバーチャル空間の前に特別なマーカーを付けた状態で立つと、自分自身もアバターとなってモニターに映し出され、VRヘッドセットを被らずにリアルとバーチャル空間でアバター同士でのコミュニケーションを取ることができる。

嗅覚と視覚に連動するVRショットバー

大型モニターに映し出されたバーチャル空間のショットバーから提供されるドリンクやフードが、裸眼で立体的に視ることができる空間再現ディスプレイにイメージとして映し出され、目の前に提供されるバーチャル接客を体験できる。さらに提供されるドリンクやフード合わせた“におい”がイメージと連動して提示されることで、よりリアリティーのある体験となる。

リアルとバーチャル共同で行うスイカ割り

VRヘッドセット「メタクエストプロ」と、モバイルモーションキャプチャー「モコピ」を用いて、新感覚のスイカ割りゲームが体験できる。「メタクエストプロ」のMR機能を活用することで、現実空間の様子とメタバース空間の参加者のアバターの両方が視認でき、あたかも現実空間にアバターが現れたような状態で体験が始まる。参加者は現実空間に置かれているスイカ風船の位置まで身振り手振りでアバターを導き、アバターがちょうど良い位置で棒を振り下ろすと現実空間のスイカ風船が連動して割れる仕掛けになっている。リアルとメタバースを連動させたゲーム。

謎解き脱出ゲーム

「リアルの秋葉原」と「メタバース上の秋葉原」を接続する際に発生してしまったエラーを修復する謎解き脱出ゲーム。ベルサール秋葉原を起点にHUB秋葉原店などのリアル会場でヒントを探しながら、エラーの謎を解いていく。参加者全員および全スポットの謎を解いた人は記念品がもらえる。

「メタバースは儲かる」を証明したい

ゲーム感覚で楽しめそうなものばかりで、しかも、友人などと一緒に気軽に体験できるイベントとなりそうだ。「遊びの要素が強いが、これらはコンテンツを置き換えると、そのまま商業利用も可能だ。今、課題を抱えている人にとっては、解決の糸口が見つかると思う。自分たちのテクノロジーに縛られることなく、どんな企業とも連携し、あらゆるテクノロジーを使い倒して形にできるのが、僕らの強みだ」。

既存の機器やサービスの組み合わせでできることも多々あるという。企業向けの展示ではなく、一般が楽しめる企画にしたことで、メタバース活用でどんなことができるのか、人々がどんな風に楽しむのかが、より実感できそうだ。「僕らはこうしたソリューションを使って、“商売”を盛り上げたい。スマホ1つで簡単にできるような形にして、大企業に対してだけでなく、小さい商店でも利用できるものとして提案したい。一般の生活者が、普段通る駅までの道から1本外れて、違う道に行きたくなるようなメリットや価値を提案し、それが来店につながるような仕掛けを作りたい」。

その裏には、近年のメタバースを取り巻く環境に対しての歯がゆさがある。21年10月にフェイスブックがメタに社名を変更して、大規模な投資を宣言した結果、メタバースは一気に脚光を浴び、さまざまな企業が参入した。しかし、その熱も落ち着いた今、人が集まらないメタバースも目立つようになってきた。

「メタバースの括りが大きくなり過ぎてしまった。配信アプリまでメタバースと言われるようになってしまうと、もはや何がメタバースなのか分からない。僕らはそれ以前からずっとVRを楽しみ、その楽しさをより多くの人に知ってもらいたい、クリエイターの力を知ってもらいたい、ビジネスにも活用してもらいたいと活動してきたのに、『俺らもメタバースだ』と言い出して、彼らがうまくいかないと、僕らまで一緒にうまくいっていないかのように見られてしまう。でも僕らは着実に成長しているし、プラットフォームやサービスを開発しながら、リアルでも小さなイベントを積み重ねてきた。その恩恵を受けている会社も少なくない。メタバースを皆さんに使ってほしいし、儲けてほしい。実際に触れてみてもらい、『やっぱりメタバースはすごい』、活用してもらい『メタバースは儲かる』を実感してもらいたい」。

リアルとバーチャルを繋げるクリエイターたちを紹介

もう1つ注目したいのが、地下1階にある「パラリアルクリエイターエリア」だ。日替わりで1日10組のサークルが出展し、リアルとバーチャルをまたにかけた最先端技術から、ミュージック、イラストまで多岐にわたるジャンルを展示、一部販売する。「大手企業でもまだ実現できていないような取り組みを個人もしくは数人でやっているクリエイターたちが、すでにたくさんいる。そんなクリエイターたちを紹介したい」。

世界最大級のメタバースイベントとして世界中から延べ100万を超えるアクセスがある「バーチャルマーケット」だが、もともとは3Dモデルを作るクリエイターたちのCtoCバーチャルマーケットプレイスとして、18年に始まった。リアルとバーチャルを繋げる「パラリアルクリエイター」においても、同様の機会創出を図る。

「すごく面白そうな世界(バーチャル空間)があるけれど、アクセスする手段(VRChatをフルに楽しむにはWindows対応ハイスペックPC利用が望ましい)がないから行けない――というのが覆りつつある。しかも、何か新しい機器などを買わなくても、面白い世界の方が、普段の生活の中に入ってくるような感じになる。気軽に行き来できるようになると、もっと面白い世界が広がると思う」。

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