ファッション

原宿のビンテージアイウエア店ソラックザーデが大阪でトランクショーを開催 “面倒見が良かった時代”のスピリットを継承

東京・原宿のジュエラー&オプティシャン、ソラックザーデ(SOLAKZADE)と、大阪・梅田のザ・ラストストア(THE LAST STORE)が、7月12〜18日に阪急うめだ本店、19〜25日に阪急メンズ大阪でトランクショー「天上天下 唯我独尊」を開催中だ。

2005年、岡本龍允(たつや)氏と弟・竜(りょう)氏の兄弟により、大阪で日本初のビンテージアイウエア専門の予約制ショールームとして始まったソラックザーデ。12年7月、東京に完全移転し、原宿の「ゴローズ(GORO'S)」の地下に店舗オープンした。15年には同ビル1階にも拡張し、アンティークジュエリーの取り扱いを始め、22年からはビンテージカー部門も立ち上げた。

20年9月には阪急百貨店とのジョイントプロジェクトとして、阪急メンズ大阪1階にザ・ラストストアをオープン。阪急阪神百貨店の出資のもと、岡本兄弟がディレクターとして、コンセプト立案から店舗デザイン、VMD、商品ラインナップや店内体験に至るまでの総合設計を行った。店舗の現場は、阪急百貨店の社員から選抜されたチームが管理・運営を行う。ビンテージ、アンティークのアイウエアや腕時計、ジュエリーを柱とし、「カルティエ(CARTIER)」「ジャガールクルト(JAEGER LECOULTRE)」「ダンヒル(DUNHILL)」をはじめとする、メゾンブランドのスペシャルピースを扱う。

両店舗ともに、購入したアイウエアは永久保証。一人一人のゲストに応じた丁寧なコミュニケーションやメンテナンスサービスが好評で、国内外セレブリティーにもファンが多い。

2年ぶりに大阪で開催する今回のトランクショーのタイトルは「天上天下 唯我独尊」。ソラックザーデから約1000本のアイウエアと約100点のジュエリーを厳選。来場したゲスト一人一人と会話を交わし、その人だけの特別な1本を提案する。両店を牽引する岡本龍允氏に、同イベントの狙いや手応えを聞いた。

WWD:ソラックザーデとザ・ラストストアの違いとは?
岡本龍允(以下、岡本):ソラックザーデではビンテージ品と僕らが手がけるオリジナル商品を扱うのに対して、ザ・ラストストアにはビンテージ品とメゾンブランドのスペシャルピースが並びます。ザ・ラストストアは阪急百貨店の森井専務と取り組んでいるプロジェクトで、メゾンブランドのグローバルCEO達との強いコネクションを持つ唯一無二の場所。それをコンシェルジュ的に対応するのではなく、スタッフそれぞれが専門知識や専門技術を持ち、ゲストにとって価値のある人間であるための努力をし続けた上で、一人一人一本一本と、誠実に丁寧に向き合い、リスペクトと愛のあるリアルな関係をゲストとも仲間たちとも築けたらと願っています。
ザ・ラストストアにはいくつもの小部屋があります。「ヴァシュロン・コンスタンタン(VACHERON CONSTANTIN)」「ピアジェ(PIAGET)」「ジャガー(JAEGER LECOULTRE)」といったリシュモングループの時計ブランドからコンプリケーションウォッチ(複雑時計)を集めたり、「ティファニー(TIFFANY & CO.)」などとハイジュエリーをメンズの括りで展開。「ダンヒル・ナミキ(DUNHILL NAMIKI)」の蒔絵が施されたパイプなどもあります。また、京都の285年の老舗帯匠・誉田屋源兵衛のシークレットイベントもこの中で開催したりしました。

WWD:今回トランクショーを開催した背景は?
岡本:10年来のソラックザーデのメンバーである山﨑リコが、4月に東京から大阪に移住し、ザ・ラストストアの現場リーダーとして着任しました。そして、5月に加入した新メンバー・幸野リナからのアイデアを山﨑リコがキャッチして、僕や森井専務に提案してくれたのが今回の開催につながりました。1日10〜15万人の来館がある阪急うめだ本店1階の玄関口でトランクショーを開催することで、多くの人にザ・ラストストアを肌で感じてもらおうと企画したのです。

岡本:これまでザ・ラストストアは、SNSもLINEのみ、ホームページも持たず、告知も一切せず、メディア取材も断り続けて、「実力があれば口コミだけでも出来るはず!」という厳しい道を選んでいました。
ソラックザーデは僕自身が20歳の頃に「会社勤めはできそうにないから好きなことをやって生きよう」と始めたプロジェクト。僕自身、社会のレールからはみ出した人間だと思っていてーーでもそういう人間だからこそ、ピュアで美しいものが作れるんじゃないかと思っています。だから「今こそ、はみ出し者がもっと表に出るべきだ」と感じ、こうしたオープンな形でトランクショーに臨むことで仲間を募っていきたいという気持ちもあります。今回出会った一人一人との交流を深め、仲間としての関係を構築していきたいです。

WWD:トランクショーを開催して約1週間が経つが、手応えは?
岡本:当初は色んな人が来館する一階の玄関口という場所でどれだけの人が反応してくれるのか未知数でしたが、昨日も今日も、昼間に入場制限がかかるほどのゲストが来てくれました。ソラックザーデからのメンバー5人のほか、ザ・ラストストアのメンバーが毎日3人と、東京から駆けつけてくれた助っ人メンバー5人。合計13人のスタッフが常に1対1で対応していたので、おそらく1日あたり100人以上の方と接し、その半数以上の方がその場で購入して下さっています。

岡本:「この場所を1週間で終えないで欲しい」「多くのポップアップを見てきたが圧倒的だ」ーーそう言って1週間に何度も訪れる方、紹介で別の友人と一緒に再訪される方もいました。ほとんどのゲストと、強くファンとして、仲間としてリスペクトを持って繋がることができた実感があります。阪急百貨店の森井専務や山口社長も現場を訪れて、荒木会長からは「ブランドの看板ではなく、スタッフの魅力に惹きつけられている。これだけの来店と繋がりは過去になかった。年2回の開催をお願いしたい」との言葉をいただきました。

WWD:トランクショーではどのようなことを行う?
岡本:普段僕らがやっているのと同じように、ゲストとコミュニケーションを取りながら、映画や音楽などのカルチャーや歴史の話を交えて、本当に似合うアイテムの提案を行なっています。そして、今後修理や調整が必要になった場合は、ザ・ラストストアに来ていただければ永久に無料でメンテナンス対応します。

岡本:買い付けで世界中を周る中で、商店街の中にある昔ながらの個人店をたくさん見てきて“面倒見が良かった時代”を強く感じました。そのようなスピリットを受け継ぐという意味でも、ソラックザーデ、ザ・ラストストアはどちらも永久保証で、どんな不可能そうな案件でもどうにかして対応する店でありたいと思っています。
ソラックザーデを知っていても来たことがない方多く、写真だけだと一見“強そう”“怖そう”というイメージを持つ方も多いですが(笑)、実際は昔ながらの心を大事にやっていて、チームのみんなもフレンドリーでお茶目なメンバーです。
今や世界中に何百店舗と構えるメゾンブランドも、100年前は2、3店舗の個人店でした。一人一人のお客さまに、オーダーメイドで対応していた。当時のように“世界中に同じものが溢れている今こそ、僕らはここにしかないものを提案しよう”というのが、ソラックザーデやラストストアの精神であり、今回のトランクショーで皆さんに提案している物です。
WWD:顧客とのコミュニケーションの中で大切にしていることは?
岡本:僕らは年に3本くらい、映画のスタイリングを担当することがあり、その中で“同じ俳優でも何者にでもなれる"ということを学びました。アイウエアだけではなくファッションそのものに、その人が何者にでもなれる可能性が無限大にあるのだと感じています。

岡本:俳優だけではなく、ゲストそれぞれの人生も映画のようにストーリーがあります。でも大体の場合は「私にはきっとこんなのは似合わない、無理だ」と自分で決めつけてしまっている場合が多い。似合うものにトレンドは関係ありませんし、僕らが「これは間違いない」と説得力を持ってアイテムを提案することで、目の前の一人一人が「自分の人生はどんな風にも変われるんだ」と自信を持つことに繋がれば良いと思います。

岡本:10代でも80代でも、出身がどこでも、どんなファッションの人でも、その人の中にあるものに向き合い、リスペクトしたいと思っています。自分の中にあるものに、自分でリスペクトできるということーー“誰もが自分の中に必ずある本当に尊いものの存在を信じて引き出す”。それが今回のタイトルである「天上天下 唯我独尊」という言葉の意味です。皆さんが自分自身をリスペクトできるように、僕らがサポートしたいと思っています。

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