岡本大陸デザイナーによる「ダイリク(DAIRIKU)」が7日12日、2024年春夏コレクションのファッションショーを東京・千駄ヶ谷の国立競技場の駐車場で行った。会場に置かれた大きな“HOLLYWOOD”のサインは、映画に影響を受けて制作を続ける岡本デザイナーにとって憧れの地。今季も、昨年東コレで発表したランウエイショーと同様に、撮影スタジオのような空間で新作を披露した。
ビンテージカーからモデルが登場
今季のテーマは“MY HERO”。そのヒーローとは岡本が大好きな映画のスターたちだ。2台のビンテージカーが会場内に到着すると、車からモデルが颯爽と降りてウォーキングを始めた。これはクエンティン・タランティーノ監督作品の「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド(Once Upon a Time in... Hollywood)」(2019年)にオマージュを捧げた演出で、レオナルド・ディカプリオ(Leonardo DiCaprio)演じる俳優リックと、ブラッド・ピット(Brad Pitt)扮するスタントマンのクリフそれぞれが乗っていた愛車に似た車種を選んだという。
ファーストルックはブラックのシアートップスと星のパッチをつけたレザーパンツ。シルクのアロハシャツやスカーフなど、よりセンシュアルで洗練されたアイテムが続く。「いつも古着に着想したカジュアルなルックが多いので、洗練されたモードな印象も加えたかった」と岡本デザイナー。
序盤はモノトーンを基調にし、カーキやレッド、ブルー、イエローと鮮やかにルックが色づいていく。これは映画「バビロン(Babylon)」(2022年)で、モノクロからカラー映画に移り変わる描写からヒントを得ている。
スタジオに集まる俳優たちのファッション
映画スタジオのような雰囲気は、着こなしにも現れていた。チェックシャツにフリンジパンツを合わせたマカロニ・ウェスタン(イタリア製の西部劇)に登場するようなカウボーイがいれば、宇宙服をほうふつとさせるメタリックのパンツを履いたSF映画に出演する俳優風のモデルもいた。また映画「死亡遊戯」(1978年)でブルース・リー(Bruce Lee)がまとった有名な黄色いつなぎにインスパイアされたボディースーツは「ベロアを使って、ファッションアイテムとして提案している」という。
名優スティーブ・マックイーン(Steve McQueen)ら1960~70年代を代表するハリウッドスターもインスピレーションになった。「大御所俳優の印象を強めるためにシルク100%のシャツやギャザーパンツを作ってみたり、テーラードジャケットの肩幅は広めに作ったり、それぞれサイズ感も絶妙に大きめにして迫力を出した」。
また岡本デザイナーのお気に入りの映画の題名を入れたTシャツには「雨に唄えば」(1952年)や「用心棒」(1961年)、「ホームアローン」(1990年)、「戦場のメリークリスマス」(1983年)、「花様年華」(2000年)など名画の英題が刻まれた。
足元は6月に発売した「コンバース(CONVERSE)」とのコラボによるハイカットスニーカーや、「レッドウィング(RED WING)」のインラインを合わせた。
スターの品格をプラスして洗練されていく「ダイリク」
夢を叶えるための着実な前進
ブランドにとって2度目の単独ショーを行ったこの夜は30度を超える熱帯夜だったが、その暑さも相まって熱気と高揚を感じるものだった。観衆は顧客や業界関係者を含む1000人を動員し、内200人は学生を招待。フィナーレではモデルがランダムに歩き回り、岡本デザイナーが全力疾走で会場を駆け回りあいさつし、会場から惜しみない拍手が送られた。
岡本デザイナーは「ショーは続けたいけれど、せっかく作り込んだセットをすぐに取り壊してしまうのはさみしい(笑)。店舗を構えて、そこで世界観を見せられるようにしていくことが目標。そして将来的にはパリでショーを行いたい」と今後の展望を明かした。確かにこのショーのために1から製作したというハリウッドのサインやビンテージカーの仕掛けは、岡本デザイナーの強いこだわりを感じさせるものだった。十数分のショーだけでなく、ゆっくりと世界観を味わえる空間も今後は必要かもしれない。
エンターテインメント性のあるファッションでファンを増やしながら、映画スターたちの品格をプラスしてますます洗練されていく「ダイリク」。大きな夢を叶えるため、着実に前進している。