セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン&アイ)が売却を決めた子会社そごう・西武をめぐって、そごう・西武労働組合が雇用維持などの懸念からストライキ権(スト権)の確立に向けて実施した組合員投票の結果が25日に公表された。投票総数3833票のうち、賛成が3600票、反対が153票となり、賛成率93.9%でスト権が確立された。労組はこの結果をもって、セブン&アイおよびそごう・西武の経営側に労使交渉の場を求める。
セブン&アイは昨年11月に米投資ファンドのフォートレス・インベストメント・グループへの売却を決定。フォートレスは家電大手のヨドバシホールディングスをパートナーに選定し、そごう・西武の再建を進める方向で動いていた。だが、売却後の具体策について交渉が難航し、売却時期が2度も延期される事態になっていた。
特に争点になったのは旗艦店である西武池袋店の売り場の大部分にヨドバシカメラを入れる改装計画だった。都市計画の観点から昨年12月、豊島区が難色を示した。そしてそごう・西武労働組合も事業計画や雇用問題についてセブン側から十分な説明がないとして反発を強めた。労組はスト権の確立を問う投票を7月9日から22日にかけて約4000人の組合員に対して実施するに至った。
25日に会見した寺岡泰博委員長は「池袋本店のフロアプラン(改装計画)に限らず、そごう・西武そのものの存在がかかっている。いま一度(スト権を武器に)交渉力を上げて経営側と臨む」と話した。具体的に何が合意できなければ、ストを決行するのか、取りやめるのかについては言及を避けた。ストを決行する場合の範囲も現時点では未定だ。
ヨドバシ・フォートレス連合は、西武池袋本店の北館・中央館の地下1階〜地上7階の8フロアにヨドバシカメラを入れる改装計画だった。しかし先週からの一部メディアではヨドバシ側が百貨店の顔である1階への出店については断念したと報じていた。この件についても寺岡委員長は経営側からは説明が全くなく、報道を通じてしか情報が降りてこないと話す。仮にヨドバシが低層階を断念しても、売り場の大部分がヨドバシになる計画自体が変わらなければ、必然的に従業員の削減につながる。そごう・西武の売上高の35%を占める西武池袋本店の面積が大幅に減れば、収益に直結するだけでなく、アパレルなどの取引先が離反することが予想されると組合側は懸念している。寺岡委員長は「実質的にはヨドバシが家主で、われわれ百貨店がテナントになる。事業継続に懸念を持たざるをえない」と言う。