毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2023年7月24号からの抜粋です)
本橋:コロナ禍を経て、ラグジュアリーや時計・宝飾消費が活況ですが、僕にとって百貨店は大衆のためのものなんです。そのためには屋台骨となるべき衣料品が元気にならなければと考え、アパレル企業との取り組みに焦点を当てました。
林:百貨店は二極化しているよね。昔と比べて市場規模は半分になって、地方ではバンバン撤退しているのに、伊勢丹新宿本店、阪急本店、ジェイアール名古屋タカシマヤは過去最高の売上高を更新している。大都市にあればいいというものでもない。好調な百貨店が具体的にどんなことをしているかは気になる。
本橋:高島屋とジュンによる新業態「モア サロン エ ロペ」の事例が印象的でした。大阪、横浜に店舗があるのですが、月に1回、高島屋の婦人服MD、ジュンの新業態マネジャーとブランドディレクター、バイヤー、ストアマネジャー、都合が合えば佐々木進社長が集まって、MDやイベントの企画を立てています。百貨店の“本物”を求める人に向けて、秋からはグレードを上げた商品を展開するそうです。高島屋は全国に店舗があるので、ローカルに根差した商品開発やイベントも企画していくそうで、楽しみです。林さんはどんなことが気になりましたか?
林:コロナ禍で上顧客の囲い込みが上手になっていた。特に三越伊勢丹と大丸松坂屋はそれぞれアプリが200万ダウンロードされていて、顧客と濃密なコミュニケーションをしている。プラスチックカードだと買った物の履歴しか出てこないが、アプリとひもづくと、どのブランドのアイテムをいつ見たか、オウンドメディアで何を読んだかなどがデータとして収集できるし、メールの開封も分かる。高額品販売ではリアル店を持っているのは強み。店とオンラインが使えればアマゾン以上のことができるという自信が伺えた。
本橋:そうしたきめ細かいサービスは百貨店ならではですね。ゆくゆくはボリュームゾーンに落ちていくといいなと思います。阪急阪神百貨店も今秋から全従業員を対象に「カスタマー サクセス アワード」を実施します。「お客さまのために何をしたのか」をプレゼン・審査するのですが、「いくら売った」ではなく顧客本位で評価される仕組み。客へのアプローチも変わっていきそうで、楽しみです。