インバウンド(訪日外国人旅行)が復活しつつある。
日本政府観光局(JNTO)が7月19日に発表した訪日外客数によると、6月は207万3300人と、新型コロナウイルスの流行以降初めての200万人突破となった。2019年同月比72%にまで回復している。
私も先日、海外出張の帰りに成田空港の切符売り場窓口で、外国人が大行列を作っているのを目にした。訪日客だけが買える、お得なジャパン・レール・パスがお目当てらしい。また、私が住む東京都小岩には格安なユースホステル、民泊が多いこともあって、近隣のスーパーやコンビニでは外国人の姿をよく見かける。自宅周囲の体感ではもはやコロナ前を超えたのではないかというレベルだ。
人数以上のペースで回復が進んでいるのが訪日外国人旅行消費額だ。観光庁が7月19日に発表した訪日外国人消費動向調査によると、2023年4~6月期の消費額は1兆2052億円と、2019年同期比95.1%にまで回復している。大きく円安に振れたこともあって、1人当たりの消費額が大きく伸びたことが追い風となった。
順調に回復しているインバウンドだが、最大の課題は中国人観光客の動向だ。今年6月の中国人訪日客数は2019年同月比マイナス76.3%の20万8500人、消費額はマイナス67.4%の1515億円にとどまった。団体旅行がまだ再開されていないことに加え、中国の景気低迷の影響、さらには日中関係の悪化まで不安要素は山積みとなっている。
識者2人に聞く、「中国人観光客の復活」
中国人観光客需要は今後どうなるのか?日本企業の中国進出を支援しているアライドアーキテクツの番匠達也クロスボーダーカンパニープレジデントと、調査会社ニント(Nint)の堀井良威(よしたけ)・経営戦略担当に、中国の大型ショッピングセール「618商戦」の動向分析を糸口に読み解いてもらった。
高口康太(以下、高口):中国の景気悪化が報じられています。
堀井良威ニント経営戦略担当(以下、堀井):中国の小売・外食売上高は昨年10~12月にマイナス成長を記録しましたが、今年1月以降はプラス成長が続いています。その意味では報道で伝えられているほど悪化しているとは言えないのではないでしょうか。
高口:二大セールではEC(電子商取引)がGMV(総流通額)を公表し、大きく成長したとアピールするのが常でした。しかし、今年はどの企業も非公開です。都合の悪い数字だったために公開しなかったとの、うがった見方もありますが?
定期購読についてはこちらからご確認ください。
購⼊済みの⽅、有料会員(定期購読者)の⽅は、ログインしてください。