「コーチ(COACH)」のサブブランドとして循環型ファッションシステムの推進をミッションに掲げる「コーチトピア」のポップアップストアが7月20日に「コーチ」のニューヨーク・ソーホー店内にオープンした。
「コーチトピア」は昨今ファッション業界が直面する廃棄や環境問題に焦点を当て、完全循環型のビジネスモデルを構築し、環境問題への意識が高いZ世代をコアターゲットにアメリカ・カナダ・イギリスでローンチしたブランドだ。「コーチ」が培ってきた80年にもわたるレザークラフトへのノウハウを利用し、Z世代の気候変動活動家やクリエイターのメンバーで構成されたコミュニティーのフレッシュな意見と「コーチ」クリエイティブ・ディレクターのスチュアート・ヴィヴァース(Stuart Vevers)監修の下、ものづくりが行われている。
近年「コーチ」でも、たびたびコレクションにサステナビリティを意識したアイテムが登場しているが、完全循環型のビジネスモデルを掲げる新ブランドを立ち上げたことにより、徹底した循環型のものづくり(サーキュラークラフト)のシステムを遂行し、サステナブルな方法でのプロダクト開発へのアプローチを積極的に行っていく。
使い古した商品に第二の人生を与える循環システム
ポップアップでお披露目された商品はバッグ、アクセサリー、ウエア、フットウエアで構成され、全てがオールジェンダー向けとなる。「コーチ」の製造過程で出た廃棄物を利用した素材や皮革工場から出るレザーの端材など、すべてリサイクルや再利用、再生可能な素材を使用して作られている。また、新製品を製造する際は新しい素材を作らないことをミッションとしている徹底ぶりで一つのアイテムの生産量は限られたものとなる。
バッグにはプラスチック廃材を70%リサイクルしたレジン製のハンドルやリサイクルレザーを使用しているため、一点一点違った表情が出るという不揃い感も愛らしい。「ひとつの商品を長く愛する」という思いがブランド理念の根底にあるため、商品を簡単に修理できるよう、何度でも生まれ変われるようにデザインされている。リサイクルコットンで作られたTシャツにプリントされたイラストはコミュニティーメンバーのクリエイターによるもので、今後もコミュニティ内のクリエイターとのコラボも行っていく。
また、商品にはNFCチップが埋め込まれ、携帯電話をかざすことで商品の情報を見ることができる。商品に使用されている素材を始め、“Lifecycle”という項目には、この商品が何回再利用され、生まれ変わっているかが表示されているなど、ひとつひとつの商品に対して透明性があり、購入の決め手にもなる。企業理念に賛同できる商品を購入する傾向が強いZ世代の消費者を納得させるためにも有効な手段と言える。
リサイクル素材を使ったポップアップストア
ポップアップストアのローンチイベントには気候活動家を始めとした「コーチトピア」のコミュニティーメンバーが訪れた他、スチュアート・ヴィヴァースも来場した。「私たちは、夢見る、デザインする、創造するための新しい循環型の方法を考え出すことによって、地球のためにより良いことをしたいという共通の願いに触発された。これは、コーチのサステナビリティのビジョンを実現するための、より大きな、より大胆な一歩です。そこでは、従来の型にはまった方法よりも、経験してそこから学ぶこと、そしてエシカルなデザインへの想いの方が優先されている」とコメント。
「コーチトピア」の世界観を体現するソーホー店の什器にも多くのリサイクル素材が使われている。アイコニックなブランドロゴのネオンサインには産業廃棄物や端材を使用し、シーティングには修理不可能となった「コーチ」のバッグを使用している。インテリアとして飾られていたレザー製のパラソルやキャンピングチェアもコミュニティーメンバーのアーティストによるものだ。Z世代が中心となり、未来に向けてのアクションを起こしていくハブとなるショップになりそうだ。日本でのローンチは10月上旬を予定している。