「グッチ(GUCCI)」「サンローラン(SAINT LAURENT)」「ボッテガ・ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」などを擁するケリング(KERING)は7月27日、ヴァレンティノ(VALENTINO)の株式の30%を、同ブランドを擁するカタールの投資会社メイフーラ・グループ(MAYHOOLA GROUP以下、メイフーラ)から17億ユーロ(約2669億円)で取得したことを発表した。取り引きは2023年末には完了する見込み。なお、これは両社のより幅広い戦略的提携の一環で、契約にはケリングが28年までにヴァレンティノの株式の100%を取得するオプションが含まれているほか、メイフーラはケリングの株主となる可能性があるという。
「ヴァレンティノ」は、1960年にデザイナーのヴァレンティノ・ガラヴァーニ(Valentino Garavani)とビジネスパートナーのジャンカルロ・ジャンメッティ(Giancarlo Giammetti)がローマで創業。2012年に、同ブランドを運営するヴァレンティノ社をメイフーラが8億5800万ドル(約1209億円)で買収した。現在のクリエイティブ・ディレクターであるピエールパオロ・ピッチョーリ(Pierpaolo Piccioli)は16年に、最高経営責任者(CEO)のヤコポ・ヴェントゥリーニ(Jacopo Venturini)は20年に就任。「ヴァレンティノ」は、現時点で世界の25カ国以上で211の直営店を展開しており、22年の売上高は14億ユーロ(約2198億円)だった。なお、18年11月には、ケリングがヴァレンティノの買収を検討しているのではないかとの憶測が広まっていた。
フランソワ・アンリ・ピノー(Francois-Henri Pinault)=ケリング会長兼CEOは、「メイフーラの下での『ヴァレンティノ』の進化に感銘を受けており、同社が今後のパートナーとしてケリングを選んでくれたことをうれしく思う。ヤコポが率いる『ヴァレンティノ』を、メイフーラとの強固な戦略的提携に基づいてさらに成長させることを楽しみにしている」と語った。
ラシード・モハメド・ラシード(Rachid Mohamed Rachid)=メイフーラCEO兼ヴァレンティノ会長は、「『ヴァレンティノ』はイタリアを代表するラグジュアリーブランドの1つであり、その発展のための戦略的パートナーとしてケリングを迎えたことを大変うれしく思う。同社と共に、今後もブランドのさらなる強化のために尽力する」と述べた。
ケリングは、売上高のおよそ半分を主力の「グッチ」に依存しているが、同ブランドは現在、転換期にある。22年11月に退任したアレッサンドロ・ミケーレ(Alessandro Michele)前クリエイティブ・ディレクターの後任として、23年1月28日に「ヴァレンティノ」出身のサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)を任命。また、ミケーレと二人三脚で「グッチ」を立て直したマルコ・ビッザーリ(Marco Bizzarri)社長兼CEOも、デ・サルノ新クリエイティブ・ディレクターのデビューショーを見届けた後、9月23日付で退任する。ケリングはこれに伴い人事の刷新を行っており、今回の取り引きに続く買収なども視野に入れ、新たな発展を目指すとしている。