ファッション

LA発「アウターノウン」 創業者が語る、自然と一体化するブランド哲学

「アウターノウン」は、“サステナビリティ”という言葉が業界に浸透する前の2015年から、“持続可能性の革命者”を掲げてきた。創設者は、サーフィン界のレジェンド、ケリー・スレーターと、数々のアパレルブランドを率いてきたクリエイティブ・ディレクターのジョン・ムーアの2人だ。国内ではサザビーリーグが2022年に輸入・販売権を取得し、23-24年秋冬に日本での卸売を本格始動した。同ブランド設立の背景からサザビーリーグとの関係までを読み解く。

「業界をゲームチェンジしたい」
海を愛する2人の挑戦

アウターノウン

「アウターノウン」は2015年にカリフォルニアで誕生した。創設者のケリー・スレーターはプロサーファーとして数々のワールドタイトルを獲得し、51歳の今も現役だ。同氏は毎日波に乗り、地球というフィールドに向き合う中で、「人間も自然の一部」という考えを強めていった。アパレルブランドのスポンサードを受けながら、どのような原料を使い、誰が、どこで生産したウエアなのかを追跡できるブランドの構想が浮かび、自ら立ち上げる決意をした。

スレーターのアイデアを具現化したのは、クリエイティブ・ディレクターのジョン・ムーアだった。同氏はカリフォルニアで生まれ育ち、美術学校を卒業後に独学で服作りのスキルを磨いた。ローカルブランドでファッションのキャリアを始めると、「アバクロンビー&フィッチ」のクリエイティブ統括や「ホリスター」立ち上げに参画するなど、グローバルブランドでアパレルビジネスのノウハウを蓄積した。デザインや企画・生産、サプライチェーン、リテール、ホールセールを包括的に学ぶうちに、低賃金で働く工場のスタッフや環境問題など、アパレル産業の課題にも直面した。いつしか「地球にも、携わる人にもやさしい、アパレル業界をゲームチェンジするブランドをやりたい」と考えるようになっていた。

そんな両者の考えが合致し、2013年にブランド設立に向けて動き出した。リサイクル素材の供給や公正な賃金を保証する工場など、2年をかけてサプライチェーンを構築し、15年に「アウターノウン」を立ち上げた。ブランド名の“OUTER KNOWN”は、“知識の外側”を意味する造語だ。既存の常識を疑い、全く新しいアパレルに挑む思いを込めた。

環境配慮の上質素材と
気取らないムードの融合

アイテムは、カリフォルニアの穏やかな空気を反映したカジュアルなムードだ。海から上がり、浜辺でそのまま羽織るイメージの“ブランケットシャツ”や、ビンテージ加工とリラックスしたシルエットのジーンズなど、気取らず、日常に溶け込むアイテムをそろえる。

素材は環境への配慮を徹底し、現時点で全商品の90%にオーガニック、あるいはリサイクル・再生繊維を使用。水着やトランクスは全商品にリサイクル・再生繊維を用いている。デニムは、工場排水の98%を再利用できる処理施設をはじめ、先進的なサステナブル技術を持つベトナムの工場サイテックスで作り、店舗什器も再生素材や廃棄素材の活用を基本とする。中長期で掲げるロードマップには、2030年までに“循環型ビジネスモデルの構築”を一つの目標に据えている。米国ではすでにリペアサービスや商品の回収・再販売システムも導入している。

日本では2015年に、サザビーリーグの「ロンハーマン」が初めて買い付けた。同社は米国のメルローズ店で同ブランドをいち早く扱っていたほか、創設者2人とも古くから親交が深かった。企業としてサステナビリティに向き合う姿勢とブランドのビジョンが合致したため、22年に国内輸入販売権を獲得。これまで「ロンハーマン」と一部の卸先に限定していたが、23-24年秋冬シーズンからさらなる販路獲得を目指し、ブランド発信を強化する。

持続可能な農園運営をかなえる
“C4”コットンとは?

アウターノウン

今「アウターノウン」が注力している活動の一つが、持続可能な綿花栽培のサポートだ。コットンの原料となる綿花はこれまで、土地を劣化させる栽培手法に依存していた。土壌の水分や栄養を保持し、炭素を除去して持続可能な農園運営をかなえる── これを目指して活動しているのが、企業連合“C4”だ。

“C4”とは、California Cotton & Climate Coalition(カリフォルニアのコットンと気候に関する連合)の略で、再生農業を実践する団体や、再生繊維のコンサルタントなど、4つの組織が主導して2020年に始動した。コットン農業経営者やアパレル・グッズブランドなども参加しており、「アウターノウン」も名を連ねる。

これまで“C4“コットンの活用は限定的で、23-24年秋冬コレクションでは数%にとどまったが、24年春夏シーズンはコレクションの約3割まで増加した。農園経営者や生産向上との関係を深めながら、さらに積極的に使用していく。

公式ECサイトをローンチ
ブランドの世界観を積極発信

ブランド公式サイトがこの秋にオープンする。これまで「ロンハーマン」をはじめ、卸先でのEC展開に限られていたが、直営のECとしてアイテムはもちろん、ブランドフィロソフィーや環境に関するコンテンツなどを掲載していく予定だ。

問い合わせ先
サザビーリーグ
03-5412-1937