イッセイ ミヤケの「132 5. イッセイ ミヤケ(132 5. ISSEY MIYAKE)」は、新たなシリーズ“No.1 ジャカード”を2023-24年秋冬シーズンに発表した。同シリーズは10年夏のブランド立ち上げ時に発表した構造“No.1”を発展させたもので、アイテムはチュニック(9万3500円)とトップス(7万5000円)、パンツ(13万2000円)をそろえる。三宅一生と、同氏が07年に創設した“リアリティ・ラボ”が始動させた「132 5. イッセイ ミヤケ」は、立ち上げから13年でどのような進化を遂げてきたのか。そして、次世代が継ぐ“No.1 ジャカード”とは。ブランドが築いてきた革新性と共に解き明かす。
「着る人に喜びや幸せをもたらす衣服」
「132 5. イッセイ ミヤケ」は、「着る人に喜びや幸せをもたらす衣服」という思いと共に、“リアリティ・ラボ”が挑み続けた「明日のものづくり」の成果が、約3年間の構想を経てかたちになったブランドである。ネーミングには、一枚の布(1次元)から立体造形(3次元)が生まれ、折りたたむと平面(2次元)になり、身にまとうことで時間や次元を越える存在(5次元)になるというメッセージを「132 5.」に込めている。
ブランド立ち上げと共に発表した基本の折り構造は10型。コンピューターサイエンティストが生み出したさまざまな3次元造形との出合いをきっかけに、その立体造形を折りたためるように平面化することで生まれたものだ。折り構造はいずれも一枚の布から形成し、体を通す位置や切り込みを入れる位置を変えることで、シャツやスカート、ワンピース、パンツなどの衣服へと姿を変える。これらは折りたたんだ状態では花のように美しく、人が身に着けることで無二のフォームに変化する。日本文化“たたむ美”にも根ざした「132 5. イッセイ ミヤケ」の新しい服は、国内外で“衣服の大革命”と賞賛を浴びた。
一枚の布から生み出す多彩な表情
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「132 5. イッセイ ミヤケ」の大きな特徴は、構造と素材である。“No.1”のパターンは、規則的に並ぶ山折り谷折りによって構成した展開図一枚のみで作り、たたんだ状態から持ち上げるとらせんを描きながら立ち上がり、下ろすとらせんを描いて平面に戻る。この構造はイッセイ ミヤケの服づくりの根幹にある“一枚の布”を発展させたもので、それまでイッセイ ミヤケが発表した“製品プリーツ”や“エイポック”のように、ファッション界に大きな影響を与える革新的技術だった。
使用する素材にも、「デザインは何をすべきか」と考え続けてきた答えの一つを込めている。チームは、日本の産地の厳しい状況や環境問題に危機感を覚えて“21世紀の素材”を探し続け、たどりついたのが再生ポリエステル繊維だった。福井にある製織工場の協力を得て、折り構造と着やすさを両立させるため、張りと風合いを兼ね備えた再生ポリエステル生地の開発に着手。試作サンプルは異例の100点以上となり、ようやく「132 5. イッセイ ミヤケ」の代表的な生地“4073番”が09年12月に完成した。ファッション界が環境問題への警笛を鳴らし始めるはるか前から現在に至るまで、同ブランドの持続可能性への思いは一貫している。
次世代が受け継ぐ新しい“No.1”
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同ブランドが培ってきた大胆なアイデアや繊細な職人技術の価値を、今の時代に合わせてさらに前進させるのが、新シリーズ“No.1 ジャカード”である。折り構造“No.1”は、上から下に向かって広がっていく、錐(すい)状の構造が特徴だ。“No.1 ジャカード”はそのかたちを生かし、太さの異なるカットジャカードのストライプを“No.1”に配置して、ダイナミックで動きのある表情を描いた。生地のタテ糸には再生ポリエステル糸を使い、フリンジで温かみのある風合いを軽やかに表現するため、埼玉の工場で織り上げている。
さまざまなストライプは、身にまとうことで着る人の体のラインと呼応するようにゆるやかに波打って曲線となり、直線的なカッティングとの交差で表情はさらに豊かになる。チームの新しい世代が中心となり、三宅がブランド名「132 5.」の“5.”に込めた未来への可能性を、今の時代に合わせて進化させたアイデアだ。
「132 5.」は時代と共に進化する
“No.1 ジャカード”の構造やディテールは、動画を見るとさらに理解が深まるだろう。イッセイ ミヤケの表現の進化は、服づくりや素材開発にとどまらず、映像やビジュアルでも次世代のアイデアを取り入れながら進歩している。「132 5. イッセイ ミヤケ」も新しい時代に向けて挑戦を続けており、三宅一生と“リアリティ・ラボ”が13年前に生み出した構造を生かしながら、さらに多くの人が親しみやすいブランドへと変化している。
このブランドの始まりに掲げた “再生・再創造”というものづくりの心は、次世代の作り手や受け取り手が継承し、今も無限に広がり続けている。
イッセイ ミヤケ
03-5454-1705