ファッション

「マーク ジェイコブス」2014-15年秋冬NY 辿り着いた境地はユートピア?

 ショー会場の天井には小さな雲が無数につるされており、来場者はスポンジ状の椅子に座る。まるで天空にいるかのような演出だ。ショーがスタートすると、音楽ではない、"声"が上から聞こえてくる。「happy days here again」というフレーズが幾度か耳に聞こえてくる。過去のつらいことは置き去り、前を向いて幸せにむかっていくという、ポジティブなメッセージを受け取る。まるで、ユートピアのような、現世ではないような空間に身を置いているようだ。

 生身の人間ではないような血色のないメイクのモデルたち。バックステージでマークが、「パウダリーで、コスメティックな感じにしたかった」と話すように、ルックのカラーは、パウダリーでスモーキーなグレーやベージュ、ピンク、オフホワイトなどのカラーを使用し、それらのカラーをそれぞれのアイテムにミックスしたレイヤードスタイルを提案している。裾が広がったオフホワイトのパンツに、有機的な曲線を描いたマーブル模様のトップス、スモーキーカラーをミックスしたスニーカーを合わせるといった具合だ。グレイッシュなピンクからベージュへ移行するグラデーションのファーコートは、ため息の出るような美しさ。袖や身幅が大きく、全体的にコロコロとした丸いフォルムは、淡いトーンと相まって、より異次元のような雰囲気を醸し出している。

 「一つの仕事に集中することで、よりシンプルでクリアーにコレクションを制作することができた」とショー後に話していたマーク。「ルイ・ヴィトン」のアーティスティック・ディレクターを退任し、「マーク ジェイコブス」に専念することで、どんなクリエイションになるのか注目が集まったシーズンだったが、何かをそぎ落として辿り着いた境地なのか。純化した結晶のような、ピュアネスを感じるコレクションだ。夜通しでショーの直前までフィッティングに集中していたマークのクリエイションへの前向きで純粋な姿勢とリンクするようだ。

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