「WWDJAPAN」のソーシャルエディターは毎日、X(Twitter)やFacebook、Instagram、TikTok、そしてThreadsをパトロールして、バズった投稿や炎上、注目のトレンドをキャッチしている。この連載では、ソーシャルエディターが気になるSNSトレンドを投げかけ、業界をパトロールする記者とディスカッション。業界を動かす“かもしれない”SNSトレンドの影響力や、投稿がバズったり炎上してしまったりに至った背景を探る。今、SNSでは何が起こっているのか?そして、どう向き合うべきなのか?日々のコミュニケーションのヒントにしたい。今回は、キャンセルカルチャーに負けない、炎上からのカムバックに関するお話。
ソーシャルエディター津田:先日、ファッションブランド「ザラ(ZARA)」から映画「バービー(BARBIE)」にインスパイアされたカプセルコレクションが発売され、話題となりましたが、現在SNS上でこの映画に関する議論が巻き起こっています。事の発端は、7月21日にアメリカで映画「バービー」と映画「オッペンハイマー(OPPENHEIMER)」が同日公開されたことです。映画『オッペンハイマー』は物理学者で原爆の父と呼ばれる人物の物語を描いており、これ自体は問題がないのですが、両作品の鑑賞を推奨する海外ファンによるネットミーム(#Barbenheimer)や、バービーと原爆を掛け合わせたファンアートが議論を呼ぶことに。さらに、映画「バービー」の米公式アカウントがこれに対して肯定的なリプライを行ったことにより、ポリティカルコレクトネス(以下、ポリコレ)的配慮に欠けているとの批判が巻き起こりました。その後、7月31日には映画「バービー」の日本公式アカウントが米公式アカウントに対し遺憾の意を示すと共に謝罪文を投稿しました。この件について、日本公式アカウントは全く関係ないですが、迅速かつ適正な対応だったと思います。また、謝罪文をテキストではなく画像で投稿した点も、検索やログ対策だとすれば、クレバーです。
ポリコレは、差別や偏見を排除し、他者を尊重することを重視する考え方です。適切な言葉遣いにより、人々が傷つくことなくコミュニケーションを取ることができるメリットがありますが、一方で過度なポリコレは自由な表現を抑圧してしまうかもしれない。人々が自らの意見や感情を言葉にしにくくなることで、議論の多様性や創造性が損なわれるリスクもあります。我々は改めてポリコレを理解し、そのバランスを取りながら、適切な発言を心掛ける必要がありそうです。また今回の一件は、企業やブランドのPR担当者にとっても、適切な広報活動を再考するきっかけになるかもしれません。
記者村上:本件含め、今企業に求められているのは、上の記事にある通り「特定の誰かを攻撃していないか?」「価値観を押し付けてはいないか?」というチェックリストを設け、発信の度にチェックをつけることです。確かに「特定の誰かを攻撃していないか?」の項目にチェックを入れることは、自由な表現の抑圧と表裏一体なのかもしれませんが、それはもう受け入れるべきだと思います。
一方、上の記事は、「スタンスを表明しないブランドは、もう支持されない」とも説いています。これもまた真実で、私自身も「誰かを傷つけてはいけないけれど、発信し続けることをやめてはいけない」と思っています。それは、後世に「発信し続けられる世の中」を継承するためでもあります。その点で映画「バービー」の日本版公式アカウントは、本国の意向にさえ異議を唱え、「発信し続けられる世の中」作りに貢献して立派だと思います。
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