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「サマソニ’23」出演のシンガーソングライターUMI 日米にルーツを持つ歌姫の素顔

UMI/シンガーソングライター プロフィール

1999年生まれ、アメリカ・シアトル出身。日米にルーツを持ち、R&Bやソウル、ヒップホップなどの要素を取り入れたヒーリング効果の高い楽曲を特徴とし、2018年に自主制作した「Remember Me」でブレイク。20年にEP「Introspection」でメジャーデビューし、22年5月にはデビューアルバム「Forest In The City」をリリースした。なお、8月11日に最新シングル「happy im」をリリースし、直後の19~20日に開催される「サマーソニック 2023」に出演予定

シンガーソングライターのUMIは、1999年にアメリカ・シアトルで日本人の母とアメリカ人の父の間に生まれ、現在はロサンゼルスを拠点に活動している。UMIというアーティストネームは、日本語の“海”から名付けられたミドルネームが由来だ。日本では古くから伝わる“名は体を表す”という言葉通り、彼女の歌声は母なる海のように力強さの中に透明感や優しさも兼ね備え、波のように心に響いてくる。

UMIは世界ですでに高い評価を得ており、ブレイクのきっかけになった2018年発表の楽曲「Remember Me」は「スポティファイ(Spotify)」で1億4000万回以上再生されている。さらに「コーチェラ 2023(Coachella 2023)」をはじめ、ファレル・ウィリアムス(Pharrell Williams)やハー(H.E.R.)が主催する音楽フェスにも出演し、8月19~20日開催の「サマーソニック 2023(SUMMER SONIC 2023)」のステージにも立つ予定だ。

次世代の音楽シーンをリードする歌姫が先日来日し、気になるあれこれを根掘り葉掘り聞いた。そのチャーミングな性格と天真爛漫な人柄に隠れた、音楽とファッションへのこだわりとは。

ーーまずは、アーティストを志したきっかけから教えてください。

UMI:自分でもなぜだか分からないんだけど、幼い頃から喋ることや食べること、読むことと同じように、歌うことも自然な動作の一つだったの。歌手になって大勢の前で歌うことがずーっと夢で、2人の妹に床に座ってもらって、私がベッドをステージに見立ててよくパフォーマンスをしていたことを覚えているわ(笑)。あと、お医者さんになりたかったの。でも、私は今音楽で聴く人の心を癒していると思うから、それも音楽を使った一種のお医者さんかなって。

ーーそれは、家庭環境も影響しているのでしょうか?

UMI:そうだと思う。お父さんが教会でドラムを叩いていて、お母さんはピアノを弾いていたから、2人の影響は強いし、何かと教えてもらっていたわ。それから、ギターも弾きたくてレッスンを受けたり、ユーチューブで独学で学んだりしたよ。

ーー影響を受けたアーティストはいますか?

UMI:フランク・オーシャン(Frank Ocean)とエリカ・バドゥ(Erykah Badu)、ディアンジェロ(D'Angelo)、シャーデー(Sade)、松田聖子、あと最近はロザリア(Rosalia)かな。家でお母さんが松田聖子をよく聴いていたから、今も曲を書いていると「あれ、このメロディーなんか松田聖子っぽいな」とか思うこともあるわ(笑)。

ーー楽曲を自ら制作するようになったのは、いつ頃からですか?

UMI:4~5歳くらいから曲自体は書いていたんだけど、大勢の人の前で歌うことは恥ずかしくて緊張しちゃうから発表はしていなくて。でも、やっぱりみんなに歌を聴いてほしかったから、2014年の15歳の時にユーチューブに投稿し始めて、そのリンクをみんなにシェアしていたの。

ーーユーチューブにはどのような映像を?

UMI:当時はK-POPをよく聴いていたから、BIGBANGやBTSの曲を英訳したアコースティックカバーが多かったわ。今は結構非公開にしちゃったけど、フランク・オーシャンの「Self Control」のカバーや、お気に入りのいくつかはユーチューブにまだ残してるよ。

投稿を続けていたら登録者が段々と増えていったから、大学に進学するためにロサンゼルスに引っ越したタイミングで、人前で歌うことのトレーニングも始めたの。オープンマイク(注:ライブハウスなどで行われる飛び入り参加型のライブ)にも毎週参加したわ。最初は人前に立つことが怖かったからずっと目を閉じたままでしか歌えなかったけど、ちょっとずつ目を開きながら歌えるようになって、1年ぐらい練習してから自分のライブを開催するようになったの。

ーー楽曲制作におけるインスピレーション源はありますか?

UMI:普段から残しているメモを曲作りに生かすこともあれば、メロディーを聴いて「青色の曲だな」って感じたら青色の感情やストーリーを考えて書いていくかな。私は、物を食べたり触ったり、話を聞いたりすると頭の中に色が浮かぶから、それをメロディーに重ねていく感覚ね。

ーーファレル・ウィリアムスやカニエ・ウェストも持っている共感覚(注:特定の刺激に対して、通常の感覚に加えて別の感覚も生じる特殊な知覚現象)ですね。

UMI:でも、これって特別な能力じゃなくて、みんなもできることだと思っているの。難しいかもしれないけど、感覚に対して素直になることが大事だから、練習してみてほしいな。

ーー以前、UMIさんが思い付いたメロディーをiPhoneのボイスメモにタイトルを付けて保存しているのをSNSで見ました。メモを残しているというのは、そのことですか?

UMI:そうそう!私って、思い出も写真よりボイスメモに残すことが多くて、例えば日本の電車に乗っている時に車内の音を録音して、それをアメリカに戻って聞いたら、写真を見返すよりも鮮明に記憶が蘇ってくる気がするの。あと、曲の中にも日常のボイスメモを取り入れることがあって、そうすることによって雲の上の世界に住んでいると思われがちなアーティストでも、みんなと同じ世界に住んでいることを音を通して伝えられるかなって。iPhoneには14年から録り溜めた3000以上のボイスメモがあるから、アーティスト活動において最も大事なことはiPhoneのストレージを最大容量にすること(笑)。

ーー17年から本格的な音楽活動を始めたきっかけは?

UMI:高校の友達に「やれやれ」って言われ続けたから。1年くらい拒否していたんだけど、今はすごくその子に感謝しているわ。とにかく音楽に詳しくて、学校が終わったら一緒に家に帰って、寝るまでいろいろなアーティストのMVを観続けた関係だったの。2人でストリーミングサービスの配信の仕方を調べたり、「スポティファイ(Spotify)」で人気のプレイリストを作っている人にDMしたり、DIYな活動を2~3年ぐらい続けて20年にレーベルに入ったわ。

ーーミドルネームのUMIをアーティスト名にした理由は?

UMI:ファーストネームがティエラなんだけど、UMIは学校でも呼ばれていた名前で、日常の自分の一面な気がするから。UMIはアーティスティックな自分をエクスプレス(注:感情や意見を表現する)できる名前だと思っていて、名乗る名前で自分が変わる気がするんだよね。

ーーフランク・オーシャンの“Ocean”も由来の一つだと思っていました。

UMI:ワオ!考えたことがなかったけど、言われてみればそうじゃん!気付かせてくれてありがとう!

ーー自分の音楽を一言で定義するなら?

UMI:ヒーリングミュージックだね。いつ聴いてもハッピーでヘルシーになれる曲を作ること、これを常に意識しているかな。私は食べるものも、見るものも、聴くものも、全てが体を構成すると思っているの。だから、自分の体が気持ちいいと感じられない音は聴かないようにしていて、ヘルシーじゃないものを食べたくない感覚と一緒だね。

ーーアルバムに収録されていない「Remember Me」が「スポティファイ」とユーチューブで最も再生されています。ヒットの背景はあるのでしょうか?

UMI:リリースしてから1年後くらいに、ユーチューブのレコメンド機能に突然ピックアップされるようになったからなの。その理由はなぜだか私にも分かっていなくて、とてもラッキーだったわ。それに、MVにもアートワークにも私が映っていなくて、曲の魅力だけで広まったのがさらにうれしかったね。

ーー日本では、初めて日本語のタイトルを採用した19年の「Sukidakara」が広く知られるきっかけでした。

UMI:インターネットサーフィンをしている時にビートを見つけて、かわいらしかったから「あ、日本語が合うかもしれない」って直感的に思ったの。歌詞は、自分ではなく他の人をイメージして書いているね。私自身K-POPが好きだけど何を言っているか分からなくて、英語圏の人もメロディーさえ気に入ってくれれば大丈夫だと思ったらその通りだったね。たまに、「正しい日本語の使い方じゃないよ」って指摘されるけど、私は日本語でも英語でも正しい使い方はないと考えていて、正しいか正しくないかだけでジャッジしてしまったら、本当の気持ちを伝えることも受け取ることもできなくなってしまう。それよりも、「『Sukidakara』を聴いて日本に行きたくなった」とか、「意味を理解したくて日本語を勉強した」って英語圏のファンに言ってもらえてうれしかったな。

ーーデビューアルバム「Forest in the City」を昨年リリースしました。タイトルに込めた思いを教えてください。

UMI:グリフィスパーク(注:ハリウッドサインのあるリー山も含むロサンゼルス中心部の広大な公園)にいる時、鳥の鳴き声や車のクラクション、ヘリコプターの飛ぶ音が全部混ざって聞こえて、「あぁ、私は都会の森にいるんだな」って思ったの。森の中にいると、何もしなくてもピースフルな気持ちになれるけど、街中でそういった場所は探さないと見つからない。だから、聴くだけでヒーリング効果があってピースフルになれるようなアルバムを作りたくて、「Forest in the City」って名付けたの。

ーーということは、先にタイトルが決めてから曲作りがスタートしたのでしょうか?

UMI:未発表曲を50曲くらい完成させたタイミングで、ある日、自分の中で何かが変わる気がしたから、その前にアルバムを1枚完成させたくなった感じ。それで、グリフィスパークに出かけたら「Forest in the City」って言葉が生まれて、収録曲が決まっていったの。

ーーヒーリング効果を意識したアルバムをはじめ、ライブでは途中にメディテーションの時間を取り入れるなど、メンタルヘルスに力を入れていますね。

UMI:朝起きてまず自分と向き合う時間を作らなければ、その日は本当の自分じゃない気がしてしまって。だから、朝起きたらスマートフォンを開いたりパソコンでメールチェックしたりする前に、メディテーションをすることにしているの。内容は日ごとに変わるから走ることあるし、とにかく自分でメンタルケアすることはとても大事。メディテーションの仕方は、人によっても日によっても違うから、自分に合ってるものを探して欲しいな。

ーー現段階で、次回作などについて話せることがあれば教えてください。

UMI:「サマーソニック」前の8月11日に「happy im」ってシングルをリリース予定よ。日本語も入ってる曲だからみんな聴いてくれるとうれしいな。

ーーファッションについても聞きたいのですが、マイルールはありますか?

UMI:ルールがないことがルールだけど、あえて言うなら感情をファッションで表現すること。だから、毎日人が変わったようにファッションも変わるの。あとは……遊ぶこと?かな。今日だったら、ネックレスをベルトとして使ってみたり、タイダイ染めしたストッキングをインナーとして着てみたり、こうやって着るのは好きだね。

ーーSNSを見ていると、古着を着ることが多いんですね。

UMI:持っている洋服はほとんど古着よ。人と同じスタイリングをしたくないから、新作を買うことはあまりないかも。それに、古着は環境に優しいからね。今、世界で着られていない洋服を全部集めたらすごい量になると思わない?だから、新しい洋服はあまり買わないで、前に誰かが着ていた服を着て、洋服の歴史をアップデートするような感覚で購入する方が楽しいはず!

ーー古着を好きになったきっかけなど、忘れられないファッション体験談はありますか?

UMI:高校の最後の夏に、地元でハイウエストデニムが超はやっていたから、友達と古着屋で買ってみたの。その写真を撮っていたら、「あれ、ファッションって楽しいかも」って思えるようになって、ファッションが好きになったかな。

ーーアイブロウピアスやタトゥーもファッションのポイントですよね。

UMI:ツアーでオランダのアムステルダムに訪れた時、朝起きたらなんだかアイブロウピアスを開けたい気分で、散歩してたらたまたま専門店を見つけたからそのまま開けちゃった(笑)。セプタム(注:鼻ピアスの一種)もツアーの前日に思い付きで開けたり、タトゥーも気分で急に入れたりすることが多いわ。

ーーマーチャンダイズではどのようなことを意識していますか?

UMI:作品のイメージに合わせることを意識していて、インスタグラムで見つけたアーティストにDMして依頼したこともあるし、自分で描いた絵をプリントしたマーチャンダイズを作ったこともあるよ。今後は、自分の作品を使ったマーチャンダイズを増やしたいね。

ーー最後に、中高生時代は陸上選手としても活躍していたと耳にしたことがあります。

UMI:中学と高校で短距離走をしていて、高校の時に2人の妹と400メートル・リレーのワシントン州記録(46秒07)をレコードしたことがあるし、ジュニアオリンピックにも出たことがあるよ。地元では“ウィルソン・シスターズ”って有名だったの!今からみんなで走る?(笑)。

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