JR川崎駅西口に直結するアクセスの良さと衣食住の充実した施設を備え、同エリアのランドマークになっているのがラゾーナ川崎プラザだ。人工芝のルーファ広場をぐるりと囲んでファッションやビューティのショップはもちろん、「テスラ(TESLA)」「アップル(APPLE)」まで並ぶ。コロナが明けてイベント開催も増加。三井不動産商業マネジメントの荻島正直ラゾーナ川崎プラザオペレーションセンター所長に商況を聞いた。(この記事は「WWDJAPAN」8月28日号付録「ビジネスリポート2023年上半期」の特別無料先行公開記事です)
WWD:2023年上半期の商況は?
荻島正直ラゾーナ川崎プラザオペレーションセンター所長(以下、荻島):1月から6月まで軒並み好調だ。予算達成に迫る数字で、前年の売り上げは大きくクリアしている。特に好調だったのは4月とGW。客層が広がり、特に飲食の回復が顕著だった。歓送迎会や宴会需要の団体予約をきちんと取れている。
WWD:好調なショップは?
荻島:「グローバルワーク(GLOBAL WORK)」や「ザ ショップ ティーケー(THE SHOP TK)」「ジーユー(GU)」といったいわゆる低価格帯のアパレルがよく売れ、幅広い客層に支持された。「グローバルワーク」は小さい店舗面積ながら、売上金額が高いのが特徴だ。
WWD:セレクトショップの動向は?
荻島:どのショップもよい中で、特に目立つのは「フリークス ストア(FREAKS STORE)」「ジャーナルスタンダード レリューム(JOURNAL STANDARD RELUME)」。仕入れ商品の比率が高く、本来のセレクトショップとしての品ぞろえがうまくいっている印象。別注商品も好評。デザイン性のあるものを探すニーズが高いので、どのセレクトショップも仕入れ商品の枠を増やしている傾向がある。
WWD:カテゴリー別に見ると?
荻島:メンズは顧客化がいっそう進み、「ニューエラ(NEW ERA)」「アヴィレックス(AVIREX)」が継続して好調。この春に急伸長したのは「ステューシー(STUSSY)」「ヒステリックグラマー(HYSTERIC GLAMOUR)」。「カルバン・クライン(CALVIN KLEIN)」も若年層に支持され、BTS効果も売り上げ増につながった。ウィメンズは高単価の商品がよく動いた。ブランドでは「ミラ オーウェン(MILA OWEN)」や、テーマ性をしっかり打ち出し定番商品と併せてバランスよく売っている「ジェラート ピケ(GELATO PIQUE)」。「マーコート(MARCOURT)」は高単価だが、顧客をしっかりつかんでいる。
脱マスクにより化粧品やアイウエアが好調
WWD:好調アイテムは?
荻島:突出したのはコスメ。マスクを外して顔を見せるようになったことで、メイクやスキンケアアイテムが売れている。「アルビオン(ALBION)」のフェイスケアラインなど、高単価商品がしっかり動いた。化粧品専門店のインクローバーでは「ディオール(DIOR)」「シャネル(CHANEL)」が堅調。今季爆発的にヒットしたのが「ジョー マローン ロンドン(JO MALONE LONDON)」。コロナ禍からフレグランス人気は継続しており、中でもギフト需要が高く、性別関係なく売れている。サングラスも好調。「金子眼鏡」から「ゾフ(ZOFF)」「ジンズ(JINS)」まで幅広くヒット。イワキメガネでは「レイバン(RAY-BAN)」が好実績。
WWD:インバウンド需要はあるか?
荻島:観光バスを止められないため、もともとインバウンド比率は高くなかったものの、コロナ前の水準に復調の兆しがあり免税品の取り扱いを増やしているところだ。特に人気のショップは「ABCマート」。「ナイキ(NIKE)」や「アディダス(ADIDAS)」の限定品にインバウンド客が集まっている。羽田空港に近い立地を生かし、今後は個人客を中心にもっと比率を上げたい。
WWD:イベントで反響が大きかったものは?
荻島:3月に開催したSDGs企画のエシカルマーケットが好評だった。8ブランドが参加し、古着やデッドストック商品を販売したり、「テスラ」が電気自動車を展示したりと盛況。特に人気だったのが、ボードパークを作った「RHCロンハーマン (RHC RON HERMAN)」。多くの子どもたちがスケートボードを楽しんでいた。ボードの廃材を使ったキーホルダーを配布したのも非常に好評。顧客のサステナビリティに対する意識の高さを感じるイベントになった。9月、参加テナントを12ブランドに増やして第2弾を開催する。GWに開催した「レゴ(LEGO)」のイベントも、ファミリー層を中心に集客増につながった。
WWD:消費動向で変化はあった?
荻島:コロナ禍が終わり、施設滞在時間が少し長くなった。映画館と飲食店の連動割引企画も当たっている。また、客単価が高く、いいものを買う顧客が増えている。化粧品に加えて、「アークテリクス(ARC’TERYX)」など上質で高価格帯の商品を求める声が多い。一方で、シーズン商品は「ジーユー」を利用するといった二極化傾向が強まっている。
WWD:リニューアルはあった?
荻島:以前インフォメーションだった区画に、金属アレルギー対応ジュエリーに力を入れている「ベリテ(VERITE)」をオープンした。また、店舗を改装した「ザ・ノース・フェイス プラス(THE NORTH FACE+)」は、品ぞろえが豊富で、もともと売り上げが大きかったが、低什器を導入して見やすい環境に整えたことが奏功し、さらに売り上げ増になった。
WWD:セールについては?
荻島:直前に買い控えがあったものの、6月末開始のポイントアップ企画と7月のラゾーナバーゲンは順調だった。今回は欠品を防げたことも良かった。「ザ・ノース・フェイス プラス」や「ジャーナルスタンダード レリューム」はプロパー商品もしっかり売れており、良いサイクルに入っている。セール会期が館とずれてしまった一部のショップは、厳しい結果になってしまった。
WWD:今後の課題は?
荻島:書店や家電量販店、ホームセンターといった大型店舗の伸び悩みが課題だ。また、地下の食料品専門店街の動員と売り上げも大きな強みであり、今後さらに強化していきたい。
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「ビジネスリポート」は定期購読者限定の特別付録で、年2回発行しています。8月28日に発行した2023年上半期版では、今回紹介した「プラダ」「ミュウミュウ」以外の特選や宝飾の好・不調ブランドや、訪日客急増による百貨店の購買行動の変化などを詳報しています。ほか、ルミネ新宿、ラゾーナ川崎、渋谷109、「ゾゾタウン」、古着などリアルクローズマーケットの好調ブランドやヒットアイテム、全国百貨店の化粧品フロアの商況など、半年分の情報を詰め込んだデータブックとしてお届け。コロナ禍だった22年下半期版と異なる傾向が明確で、非常に読み応えのある内容になっています。
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