ファッション

「CFCL」高橋悠介が見据える 未来と直結した「再生素材」の可能性

「CFCL」は、日本のファッション産業でライフサイクルアセスメント(LCA)をいち早く実施し、地球環境への責任が認証された素材の使用率を公表している。同ブランドの高橋悠介代表兼クリエイティブ・ディレクターは再生素材とも向き合いながら、ニット表現の高みを目指している。同氏が「ブランドの品格へとつながっている」と話すのが再生セルロース繊維「ベンベルグ」だ。「CFCL」のクリエイションの一角を担う「ベンベルグ」の魅力とは。

認証、数値化がスタートライン
製品への責任が信頼へとつながる

「CFCL」は、3Dコンピューター・ニッティングを用いた無縫製のニットウエアで、デビュー当初から大きな話題を集めた。デビューコレクションで22型だったアイテムは現在160型近くまで増え、エレガンスを宿したニット製品の数々を生み出しながら成長を続けている。好調を後押ししている要因の一つは、妥協のない素材選びだ。

高橋代表は「『CFCL』はブランド立ち上げ当初からリサイクルの観点にこだわった素材選びを続けており、中でも国際的な認証を取得している素材に重点を置いている」と語る。その理由について「環境配慮への意識が社会的に高まり、サプライチェーンの透明性などに注目が集まる反面、言葉だけが先行するあまりサステナブルであること自体の実証がしづらいようにも感じていたからだ」と続けた。「大切なのは、世界中のコンシューマーに対して偽ることなく、信頼してもらえる存在であり続けること。そのためには、自社の製品をサステナブルやエコだと謳うのではなく、どのような素材を何%使用しているものなのかを具体的に数値化して公表することに意味があると考えたのがスタートだった。今でもその考えに変わりはなく、自分たちの製品にいかに責任を持つかが素材選びの基準になっている」。

「CFCL」の製品クオリティーを支えている素材の中にキュプラ、つまり「ベンベルグ」の存在がある。同ブランドが使用する素材比率の中で「ベンベルグ」の割合は、2シーズン目が全体の3.3%だったのが、5シーズン目は6.32%に拡大している。

「アイテムの型数は増えているものの、使用している素材数はブランド立ち上げ時から大きく変わっておらず、現在も10種類に満たない程度。それは一度選んだ素材を長く使うことでサプライチェーンへの負担を軽減する考え方に基づきながら、『CFCL』の服作りにおいて重要視している“リサイクル”と“オケージョン対応可能な品格”の両方を実現できる素材を選び続けているから」。少ない素材でも、編地やゲージなどを変えて見え方の印象を大きく変えているという。

使用比率が高い「ベンベルグ」については「オーガニックコットンや再生ポリエステルでは出せない優雅なドレープ感と奥行きのある色彩を表現できるため、『CFCL』とは非常に親和性が高い」と高橋代表。「『ベンベルグ』は裏地に用いられてきた歴史もあり、肌に直接触れたときの心地良さは他にない魅力。そして一般的に“洗えない素材”と認識されがちだが、実際は他の繊維と複合させて耐久性をさらに高めることで、水洗いも可能になる。だから、糸自体の品格や特徴を最大限にキープできる混合率を慎重に選んでいる」。
 
高橋代表が考える“未来の素材”とは、グローバルにおいて絶対的な評価基準となる認証をパスした上で、服本来の豊かな色彩と着心地の良さをかたちにできるもの。「CFCL」は次のステージに向かって、“やさしさと気品”を掲げる「ベンベルグ」と共にファッション、そしてアパレル産業に新たな生命を吹き込んでいく。

新時代を彩るサステナブル繊維
「ベンベルグ」

旭化成が世界唯一の生産メーカーとして改良改善を積み重ねているのが「ベンベルグ」(一般繊維名:キュプラ)だ。コットンの種子の周りに生える産毛(コットンリンター)を100%原料にし、独自の技法によって精製・溶解したピュアな再生セルロース繊維で、創業90年以上の歴史を持つ。「ベンベルグ」はこれまで、環境に配慮したものづくりによって「RCS認証」などの国際認証を取得してきた。また一年を通して快適な着心地を実現すべく、夏に涼しく、冬に暖かい優れた吸放湿性と放熱性、制電性など機能面も追求。すべりの良さから裏地としてよく使われてきた素材だが、「ベンベルグ」ならではの気品あるドレープ感や美しい光沢の使用用途は年々広がり、アウターやスポーツウエア、ホームテキスタイルに加え、南アジアの伝統衣装サリーなど世界中で用いられている。

肌にやさしく、なめやかな触り心地

「ベンベルグ」の繊維断面は他繊維に比べ真円に近く、すべすべとしたなめらかな表面が特徴だ。そのため摩擦による刺激が少なく、デリケートな肌にもやさしいソフトな風合いを実現している。

海洋生分解性国際認証を取得

「ベンベルグ」は欧州を中心に生分解材料・製品の認証を行う、テュフ・オーストリアが実施している海洋生分解性の認証「OK biodegradable MARINE」を新たに取得。これによって海水中で生分解可能な繊維であり、かつその生分解されたものは海洋生物の生育など環境に対して安全なことが認証されている。

EDIT&TEXT:KEISUKE HONDA
問い合わせ先
旭化成ライフイノベーション事業本部ベンベルグ事業部第一営業部
06-7636-3360