ワルのムードは、クロシェ編みで作り、時には花まであしらっているのに、ボディコンシャスなシルエットとシャビー(ボロボロ)な加工を加えたため、男クサいモトクロスパンツとブルゾンなどから醸し出されている。一人のボスを崇拝する体制を否定するチーマーは、全員が同等の存在。そんな事実を匿名性へとつなげ、洋服に大きなフードを配して顔を隠せるようにしたり、そもそもヘッドピースをつけてモデルの顔を見せなかったり。特殊な編み方で作った突起を持つボレロや、ビスコースをくくりつけたフェイクファーのようなニットで作るアイテム群は、「縄張り争い」する動物とチーマーを結びつけた生まれたもの。ビスコースは一束ごと、手編みでニット本体に絡めるクラフツマンシップの結晶だ。それを敢えて汚く見せるグランジのテイストは、トレンドとして台頭した90年代の象徴的アイデア。エプロンのようにスカートを履く、ジェンダーレスな発想も根底に流れている。これもまた90年代だ。
15年春夏ロンドンメンズは、15年プレ・スプリングとともに発表された。プレは、今回が初めて。ニットという単品に特化していたブランドは、デニム、そしてプレコレと着実にビジネスを広げている。