毎週発行している「WWDJAPAN」は、ファッション&ビューティの潮流やムーブメントの分析、ニュースの深堀りなどを通じて、業界の面白さ・奥深さを提供しています。巻頭特集では特に注目のキーワードやカテゴリー、市場をテーマに、業界活性化を図るべく熱いメッセージを発信。ここでは、そんな特集を担当記者がざっくばらんに振り返ります。(この記事は「WWDJAPAN」2023年7&14日号からの抜粋です)
木村:みんなでアパレル産業をサステナブルに転換していこうと努力しているのですが、なんだか点での取り組みに終始してしまっているように感じていて。どうしてなのかを考えた時に、サプライチェーン全体が見えていないからではないかと。理想像を描くには、まず全体像を知ることが大事ではないかと思い、トレーサビリティーについての特集を企画しました。ハードパワーとして欧米から情報開示の波も来ています。
向:「サプライチェーンは細くて長い」とよく言うのですが、自分も含めて本当に理解している人はほとんどいないかもしれないですね。調べてみると、1枚のTシャツを作るのに40工程ぐらいあり、圧倒されました。
木村:ユナイテッドアローズと豊島とファッションレボリューションの担当者鼎談でも出てきましたが、ラナプラザの悲劇や大量廃棄問題など、アパレルの生産について、ネガティブな情報が届いていて、「(服を買うことで)自分もそこに加担しているのではないか」という不安が消費者にあるんじゃないかと思うんです。実際、私自身もそんな不安が、サステナビリティへの興味につながっています。今回の取材で、ほとんどの縫製工場は先進的で、働く環境も整備されていると聞き、勉強になったと同時に、もっとその事実が世の中に知られるべきだと思いました。情報のアップデートが必要です。
向:9月に日本でも公開されるドキュメンタリー映画「ファッション・リイマジン」でまさに服の生産工程をたどっていましたが、アパレルのサプライチェーンが本当に細分化されていて、ちゃんと伝えようとすると映画1本分かかります。でも、全体像を知ることで、それぞれの立場がどうあるべきか、何ができるかを考えられるようになりますね。今回の特集がその一助や、考えるきっかけになればうれしいです。
木村:「今分かっているのはここまでだけれど」と自分たちの理解を明確にした上で、ネガティブな面もポジティブな面も明らかにしていくことが、消費者の「不安」を拭うための一歩だと思いました。
向:ファッションは好きだけれど、どんなふうに作られているかは知らないという人も多いはず。日本人はつい完璧でないと発信してはいけないと考えがちですが、まずは持っている情報を明かしていくことが大事ですね。