「見上げる」は、イメージした男性像の日常の行動であり、「ルイ・ヴィトン」が今回のコレクションで構築を試みた世界観やスタイル、男性の生き方でもあるような気がする。スタイル・ディレクターのキム・ジョーンズは毎シーズン、実際に特定の地域を訪れ、そこで見たモノや感じたコトをキャッチーな色とモチーフを駆使しながら、時にストリートライクに若々しくまとめてきたが、今シーズンは青年特有の“青臭い”雰囲気が薄れ、大人の階段を一歩上った印象。トレンドに呼応するかのように、“カワイイ”モチーフは影をひそめ、サマーモヘアで作ったダブルのジャケットに70年代調のハイウエストパンツ、ラグランではなくセットインタイプの袖を持つトレンチコートなど、大人っぽい。青年が、ワンランク上のスタイルを「見上げ」、憧れ、思い切ってフォーマルの世界に足を踏み入れたような雰囲気だ。
インドのムードは、キムが街で目にしたピンクの色使いと、インドからパキスタン、中国にかけて続くカラコルム山脈の山々の稜線を思わせるジグザグのシェブロンパターンなどに現れ、大人フォーマルとミリタリーをベースとしたコレクションに躍動感をプラスする。モノグラムのバッグにも、ブランドにとってアイコニックなアルファベットであり、山の稜線を思わせる「V」の文字を大胆に加えた。トレンチコートやフライトジャケットは、レザー製。布帛のトレンチにヌバックのベルトを組み合わせるなど、レザーの匠としてのアイデンティティもキチンと表現している。