会場には巨大なピンクの家が設置され、ラベンダー色の砂浜が敷かれている。会場の椅子にはヘッドフォンがそれぞれの席に置いてある。ショーが開催するとヘッドフォンを装着するようにとアナウンスが流れ、来場者は家の中で女の子が何をしているのかの説明を聞きながら、家の周りを歩いていくモデルのルックを見るという趣向だ。ヘッドフォンの外からは風や海の音が遠くから聞こえる。まるで見ている者が家の中にいるかのような演出だ。
海辺から登場するにはあまり似つかわしくない、カーキ、オリーブ、ネイビーをベースにしたミリタリーのユニフォームのようなワンピースやパンツスーツを着たモデルたちが次々に登場する。顔はメイクをまったくせず、ヘアは無造作で目が隠れてしまうくらいのウィッグ。明るいピンクの家とは相反するような雰囲気だ。スカートには小さなバッグほどのカーゴポケットが付き、エポーレットや腕章の代わりのような、たくさんの丸いプラスチックが服に施されている。その丸のいくつかは、クリスタルでキラキラと輝いている。足元は同系色のフラットサンダル。素材をシルクやコットン、透ける素材にしたりと、表情を変えながらも先シーズン同様にワントーン・コーディネートのスタイリングだ。
「主義主張や個性を求めるときにでも、同じような服を着て、みな同じように見える」。マーク・ジェイコブスのどこかシニカルなアンチテーゼが見え隠れしているかのようだ。