ファーストルックのモデルは、10年ほど前に一世を風靡したジェマ・ワード。ランウェイの一線から退いていたジェマだが、スリムな体型を取り戻し、見事なカムバックを果たした。ドールフェイス・ブームを巻き起こしたジェマのカムバックは、ここ数年続いたスポーティーでアンドロジナスなスタイルから再び、ファッションがフェミニンな方向へシフトする象徴なのかもしれない。
前半は、得意とするコートのシリーズ。かっちりとしたメンズライクなコートは、デニムに施すような太いステッチがポイントになっている。高めにとったウエストラインや袖口、ラペルの縁、肩から胸の上を通って裾まで貫く縦のラインといったステッチは、バストの高さやウエストの細さを誇張し、コートを着ていても女性の身体の立体を浮かび上がらせる。
このステッチはショーの後半、アイテムがスカートとカットソーなどへ変化しても引き続き採用された。そして、ショーの冒頭ではシンプルだった素材使いは、後半に向けてどんどん複雑になっていく。ウールのコートをベースに、ステッチに沿って部分的にレザーで切り替えたり、袖だけをレース調にしたり。フィナーレ近くには、ヴィンテージ調の異なる生地をいくつも複雑にパッチワークし、ほっそりとしたIラインのドレスやオーバーサイズのコートに仕立てた。完璧なコラージュは、ただし裾を切りっぱなしとすることで、ヌケ感を加えてバランスをとる。異なる要素を併せ持ちながら絶妙なバランスを取る服に、ミウッチャが一貫して提案する強い女性像が見てとれる。