アパレルは、サプライチェーンが長く細分化されているためにトレーサビリティーの実現は難しい。では、具体的にできることは何か。ここでは、そのヒントを探るべく課題意識が高い3者に、それぞれの立場で考えるトレーサビリティーの難しさや重要性について語ってもらった。繊維商社豊島の溝口量久・営業企画室室長、ユナイテッドアローズの玉井菜緒経営戦略本部サステナビリティ推進部部長、ファッション産業の透明性を推進するファッションレボリューションジャパンのプロデューサーで消費者への啓発活動に取り組む鎌田安里紗だ。(この記事は「WWDJAPAN」2023年8月7&14日号からの抜粋です)
(左)玉井菜緒/ユナイテッドアローズ経営戦略本部サステナビリティ推進部部長 プロフィール
1999年ユナイテッドアローズに入社。情報システム部門でコミュニケーションツールの企画・運用を担当後、2004年に自ら志願して同社の社会・環境活動の推進に従事する。同分野に携わって19年目。23年4月から現職
(中央)鎌田安里紗/ファッションレボリューションジャパン・プロデューサー プロフィール
ファッションレボリューションの日本事務局を務める一般社団法人ユニステップス共同代表。衣服の生産から廃棄の過程で、自然環境や社会への影響に目を向けることを促す企画を幅広く展開。消費者庁サステナブルファッションサポーターなども務める
(右)溝口量久/豊島営業企画室室長 プロフィール
1996年豊島入社。繊維原料部署の営業、インドネシア駐在を経て2004年にオーガニックコットン普及プロジェクト「オーガビッツ」を開始。その後「グリーンダウンプロジェクト」「フードテキスタイル」などサステナブル素材の普及を推進。20年にトレーサブルオーガニックコットンブランド「トゥルーコットン」をスタート。17年からはCVCを通してスタートアップ企業への投資と新規事業の創出を担当
WWDJAPAN(以下、WWD):日本のアパレルの現場でトレーサビリティーはどれくらい重要視されている?
溝口量久・豊島営業企画室室長(以下、溝口):全体的な意識は間違いなく高まっている。2019年にファッションレボリューションが主催したトレーサビリティーをテーマにしたイベントも、ターニングポイントになったのでは。顧客の小売店との間でもそこにまつわる会話が増えた。現状川上では品質管理の目的が大きい。例えば、サステナブル素材や機能素材を販売するときに、他の素材が混ざっていないことや機能性を証明する必要があるからだ。
玉井菜緒・ユナイテッドアローズ経営戦略本部サステナビリティ推進部部長(以下、玉井):当社では19年から、サステナビリティの重要課題の洗い出しに着手した。私も情報収集のためそのイベントに参加した一人だ。また21年に、業界団体のジャパンサステナブルファッションアライアンス(JSFA)が立ち上がったのも、意識の高まりがあってこそだろう。アパレルのサステナ担当者は、正直孤独。各社が抱えている課題を共有しあえる場ができたことは、非常に画期的だった。
WWD:アパレルはサプライチェーンの透明化が難しいといわれるが、具体的に何が課題なのか?
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