成分を重視して、スキンケアやヘアケアを選ぶ人が増えている。今回、注目するのは、「シコン(紫根)エキス」。多年草ムラサキの根を乾燥させたもので、赤紫色が美しくポリフェノールが豊富。一見すると、新しい成分のようにも思えるがその歴史は古い。江戸時代に、外科医・華岡清洲が紫根の粉末と豚の脂を混ぜた軟膏「紫雲膏(しうんこう)」を考案。湿疹、ニキビ、火傷などに使える万能外用薬として活用されてきた。各メーカーに、シコンエキスを配合した経緯やヒット商品の売れ行きを聞いた。
ニキビに悩む人の「クレンジング」にも
ランクアップは、2021年5月に発売した皮脂と毛穴の専門ブランド「アクナル(ACNAL)」の“アクナル ピンクハーブクレンジング”(120mL、3190円)にシコンエキスを配合している。ニキビに悩む人のクレンジング・洗顔中は、肌に触れる時間が長く負担がかかりやすいという理由から。佐々木春佳ランクアップ 製品開発部担当は、「繰り返すにきびの原因は、『毛穴の炎症』と『皮脂の酸化』であり、ニキビを繰り返さないために対策が必要だと考えた。クレンジング・洗顔中は、肌に触れる時間が長く負担がかかりやすいが、洗っている間も肌に負担をかけずニキビケアをできたらという発想から、抗炎症・抗菌作用に優れたシコンエキスを選んだ。“アクナル ピンクハーブクレンジング”は、3月の時点で、定期便での契約者数ベースが前年同月比236%増、売り上げは同220%増と好調に推移しており、にきびや毛穴の詰まりに悩む方から高い支持を得ている」。
毎日使える、スカルプケアシャンプーにも
「ウルオッテ(URUOTTE)」のリンス不要シャンプー“ナチュラルシャンプーエキゾチックフラワー”(250mL、3300円)にも、シコンエキスが配合されている。クィーン代表笹川直子は「スカルプケアを習慣化したいと顧客から支持されている。頭皮の小さな炎症によるかゆみやフケが気になる方からも好評で支持を得ている。特に、20〜30代で頭皮ケアを始める女性から人気」とコメント。
水を一滴も使わず日本原種の薔薇ハマナスを使用した美容クリーム
「アムリターラ(AMRITARA)」は、シコンエキスを配合したアイテムを数多く展開する。“ローズエナジークリーム”(30mL、7480円)、“マイルドベールクリーム”(35mL、6710円)、“ピュア トリートメント リップグロス(ボタニカルピンク)”(10g、2640円)など、幅広い。勝田小百合アムリターラ代表兼商品開発は、「紫根の持つ有効成分『シコニン』の効果を、肌や唇にも活かしたいと考えている。また海外産ではなく、在来の日本産の紫根を使いたいという強い思いがあり、北海道産の農薬不使用で栽培した紫根を使用している」。特に“ローズエナジークリーム”の人気が高く、22年3月から23年3月までの累計販売数は1742個にのぼる。
アリミノは新ラインのキー成分に選定。毛髪の酸化抑制に期待
「アリミノ(ARIMINO)」は、美容室専売ブランド「スプリナージュ(SPRINAGE)」より、新ライン・モイストヴェールを発売する。“スプリナージュ シャンプー モイストヴェール”<医薬部外品>(280mL、3300円)、“スプリナージュ トリートメント モイストヴェール”(230g、3300円)、“スプリナージュ モイストヴェール ミスト”(120mL、3300円)、“スプリナージュ モイストヴェール バーム”(25g、3300円)の共通成分として選んだのがシコンエキスだ。津田真希アリミノ商品開発部担当は、「植物は特有の色を持つものが多くあり、その色味成分に有効性が確認できる。色素を持つ植物の検討を行ってきたが、ピンク色を呈することができるシコンをキー成分として選定した。ピンクは心を穏やかにし、女性ホルモンを活性化するなどの心理的効果も報告されており、情緒的価値を創出できると考えた。研究では、肌への新しい有効性や毛髪の酸化抑制へのアプローチも認められた」と話す。
――― 今後、盛り上がりが期待される注目成分は?
佐々木春佳ランクアップ 製品開発部担当:40代以降に肌のハリ不足に着目して開発された、3種の植物の混合成分『ハリスチャー』だ。肌の土台を整え、セラミドを合成するなど、みずからのうるおいを作り出す力をサポートする働きがある。近年、注目されているゾンビ細胞の増殖を抑制する働きも。ハリスチャーの研究結果は日本抗加齢医学会総会にて発表し、2つの特許を申請している。
笹川直子クィーン代表取締役:2020年11月のリニューアル時から米や茶など、日本の土地に根差した植物に着目している。耕作放棄地の茶の実オイルを配合した“ナチュラルシャンプー 無香料”(250mL、2750円)は、サスティナブルコスメアワード2021を受賞した。
津田真希アリミノ商品開発部担当:ルイボスエキス。ルイボスは、南アフリカに自生する落葉亜低木でハーブの一種だ。ルイボスエキスは、体内のたんぱく質と余分な糖がくっつく「AGEs」をブロックする働きがあるといわれている。髪と地肌の糖化を防ぎ、エイジングに有効な植物由来成分として注目している。