コンセプトありき、テーマありきのショーではない。デザイナーのアルベール・エルバスはこれまでも常に服を着る人のことを考え、寄り添う、プレタポルテを作ってきた。ブランド設立125周年を迎えた今シーズンもその姿勢は変わらない。ベテランモデルから10代のモデルまで、それぞれの年代、個性に似合う服が用意された。
前半は、さまざまなドレスが登場した。その多くは、流れるようなシルエットでありつつ、シャープな印象を与える。ジャージやシルクサテンの柔らかい素材使いと、正確なカッティングのコンビネーションがそのイメージを形作る。ハトメとリボンを生かして生地を「つなぐ」ことで形作るドレス、大粒のパールを縫い付けたジュエリーと一体化したドレス、仕付けの糸と針を残したままのようなドレス。そして、縫い代を飾りに替えたインサイド・アウトのパッチワーク・レースのドレス。素材、カット、加工、装飾など服作りの各工程で新しい技を取り入れて、一ルック一ルックにアイデアが盛り込まれている。
アイテムはもちろんドレスだけではない。「女性たちには夜の服、昼の服。一日を通じてさまざまなワードローブが必要だから」とエルバスいうように、女性の一日の生活に必要なワードローブがそろう。
後半に登場したアンティーク調の柄は、ジャンヌ・ランバンの私邸やランバン本社の室内装飾も手がけたインテリアデザイナーのアルマン・アルベール・ラトゥーの作品から。ラトゥーが1920年代に活躍したこともあってか、アール・デコの要素も見てとれる。