会場は、イサム・ノグチが作庭したことで知られるパリ・ユネスコ庭園。徳島県の阿波の青石を使った開放的な庭園は、有機的な曲線を描いている。会場から受け取る清涼感、建築的アプローチ、アート・フィーリング、未完の美、オーガニックなどのイメージは新生「ロエベ」のキーワードそのものだ。
ファーストルックは、メゾンが“オロ(スペイン語で金の意味)”と呼ぶ黄金色のラム・スエードのドレスと、新しくなったアイコンバッグの“アマソナ75”(75は“アマソナ”が誕生した年)。ごく柔らかく、上質で希少なラム・スエードは、コレクション全体を通じて使用されたキー素材だ。ドレスの身頃に縫い留めた共布のスエードは歩くとヒラヒラと揺れ、その薄さと柔らかさを伝える。揺れる布は無造作な切りっぱなしにも見えるが、生地の端にはニードルパンチを施してあるため、ほつれることはない。
メゾンのアイデンティティである上質なレザーはもちろんだが、アンダーソンはレザー以外の素材も積極的に扱った。しわ加工を施したコットンのボリュームスカートや麻混のニット、ローシルクなどナチュラルカラーの天然素材をレザーと組み合わせている。
シルエットはロング&リーンが基本。シンプルなシルエットにノットやアシンメトリーで動きを加える。キーアイテムはアンダーソンが“柔道パンツ”と呼ぶハイウエストのパンツで、アンドロジナスなイメージを決定づけた重要なアイテムだ。ウエスト部分には刺し子風のステッチが施され、ベルトは共布で柔道の帯のようだ。
カラーパレットは白やエクリュのナチュラルカラーをベースに、ストロベリーピンクやアクアブルー、カナリアンイエローなどを差し込む。これらの明るい色は今夏アンダーソンが来日した際に、街の景色から受けた影響もあるという。ラバーTシャツなどに使用した鴨のプリントは、ハンティングをモチーフにした「ロエベ」のヴィンテージのスカーフからインスパイアされたもの。
アンダーソンが、シグニチャーラインで提案してきた男女がひとつのワードローブを共有する“シェアド・ワードローブ”の考え方は「ロエベ」でも反映されている。先に発表されたメンズラインは女性客にも売れているというが、今回発表したウィメンズラインは逆に男性からも支持をされそうだ。
ショーの後、バックステージに真っ先にやってきたのは、同ブランドを傘下に収めるLVMHモエ ヘネシー・ルイ ヴィトンのベルナール・アルノー社長兼CEO、続いてアンダーソン抜擢に一役を買ったデルフィーヌ・アルノー=「ルイ・ヴィトン」エグゼクティブ ヴァイス プレジデント。2人とも「素晴らしいショーだった」と声をかけ、アンダーソンを安心させていた。