18世紀という切り口は、先に発表した2014−15年秋冬オートクチュール・コレクションからの流れ。今回は、プレタポルテとしてより機能的で、日常着としての工夫がされている。例えば多用した小花柄は、ジャカードや刺繍に加え、プレタポルテではプリントを多用。少しぼやけた花柄は現代ならデジタルプリントで加工することもできるが、そこは「ディオール」、18世紀から続く伝統的なプリントの技法を採用している。希少な服作りの技術を継承することもメゾンの使命と捉えているラフ・シモンズらしい選択だ。
マリー・アントワネット風のドレスは、パニエを使うことなくインナーのチュール使いと生地のカッティングで丸いボリュームを作り出した。トップスはスポーティーなニットでそのギャップが面白い。逆に、張りのあるコットンのTシャツはカッティングによりカクテルドレスのようなシルエットを描く。
18世紀の男性の宮廷服をイメージしたジレ、くるみボタンをびっしりと飾ったシルクジャカードの花柄のコートなど、一着ずつ丁寧に見ていくとまるで服飾史を紐解くかのような奥深さがある。足元はラフィア風にストレッチ素材を編んだスーパースキニーなブーツで、手には新しいタイプのハンドバッグ“ディオラマ”。服と同じように刺繍を施しつつ、ストラップはレザーとチェーンを組み合わせて機能的だ。
ある意味、ムッシュと肩を並べて競い合うような今回のアプローチ。クリエイティブ・ディレクターに就任して5シーズン目となるラフ・シモンズの「ディオール」がネクスト・ステージを迎えたと言える。