フィービー・ファイロにしては珍しく、インスピレーション源がある今シーズン。イギリスの歌手ケイト・ブッシュの歌や生き方への共感がデザインに反映されている。ランウェイでかかった曲も1989年リリースの「This woman’s work」。透明感のある高音の歌声が響く中、レトロな匂いのする夏のワードローブが展開する。
インスピレーションがあるからと言って、分かりやすく形になるわけではない。自立した女性、オープンマインドな態度といった感覚が、これまでよりもリラックスしたスタイルに反映されている。
ロング&リーンのフォルムを基調に、ちょっとしたカッティングの妙で見たことのないバランスが生まれる。例えば、白や黒のシルクのTシャツドレスはごくシンプルな形だが、ひらひらと飛び出した布や、ずれた位置に付けた大きなポケットがあることで女性らしさと絶妙な抜け感が生まれている。透明感のあるイエローや白のシルクニットは裾にたっぷりとフリンジをあしらうことで歩く度に揺れてセンシュアルだ。
グラフィカルな要素とハンドメイドの組み合わせもポイントで、シルクニットは両脇に大きな丸い穴を開けてかがっている。靴ひものような素材でできた赤と青のマクラメ編みのドレスは手作業で制作に3日を要したという。
また珍しく花柄のプリントも採用。レトロでどこかオリエンタルな花柄プリントのシルクを使い、パネル状の生地を数枚重ねて形づくったドレスや、ジャンプスーツとドレスを一体化させたアイテムなど、一見シンプルだがよく見ればユニークな形のアイテムがそろう。
カウベルを使ったベルト、メード・イン・フランスの陶磁器でできた“手”“胸”“蛇”をモチーフにしたアート作品のようなネックレスなどアクセサリーも目を引く。