「サカイ(SACAI)」らしさと言えば、異なる要素を一つにまとめあげる“ハイブリッド”の感性と技。クラシックと“カワイイ”、スポーツとエレガント、メンズとフェミニンなど、異なる要素を、時に一枚の生地に取り入れ、時にコーディネートで組み合わせる。そのバランス感覚が魅力だ。
今季の“ハイブリッド”は形で表現。ユニフォームやリトルブラックドレスなど普遍的なアイテムをベースに、生地を別の生地の中に差し込むことで新しい形とバランスを生んでいる。
何をどこにどう差し込み、ハイブリッドしているのかを言葉にするのは難しい。非常に複雑な仕様で説明が長くなるからだ。たとえば、ファーストルックはこうだ。フェミニンなポリエステルシフォンとスカーフ調のプリント生地をはぎ合わせ、胸元と腰回りにだけミリタリー調の生地をインサートする。ボトムスは、異なる柄のプリントを組み合わせたスカート。
ミリタリーは今季のポイントの一つで、レースやプリントなどフェミニンな素材とのコントラストを描く。カーキ色のミリタリーコートは、袖と身頃の一部分にレースが“浸食”しているかのような切り替えとなっている。
生地やアイテムを重ねても、軽やかさがあるのは、透ける素材や生地に穴を開けるカットワークの技法を多用しているから。緑色のチェックのコットンのシャツ地は、上に格子柄の刺繍を施し、部分的にカットワークして生地に穴を開け、黒いプリーツをインサートした。白のラップスカートは、植物風の柄をオパール加工で施し同じく生地に穴を開けている。
大切なのは、仕様が複雑であることや技法が凝っていることではなく、複雑なレイヤードの「サカイ」を着ることで、女性たちが自分の中に複数の顔を見つけられることにある。ミリタリーにレースが浸食する感覚を、着る女性たちは心地良いと感じる。