フランク・ゲーリーが設計した現代アートの殿堂、フォンダシオン ルイ・ヴィトンはその建築物自体がアート作品。大きく帆を広げた船のようにも、何か生物のようにも見える。そんな存在感ある建物を宇宙船に見立て、ジェスキエールは観客をファッションショーという旅へと導いた。
光線が飛び交う真っ暗な会場。突如、さまざまな国籍の男女の顔が表われ、スペーシーな声でメッセージを伝えてくる。「この船は森に囲まれ、3600枚のガラスのパネルで覆われている」など、フォンダシオンの説明がなされた後、船が旅立つがごとくショーがスタートした。この時点で観客たちは、ジェスキエールが作り出した近未来な世界観に引き込まれており、まるで乗船客になった気分でショーを見守ることとなる。よりロマンティックな世界観を描いたマーク・ジェイコブスと方向性は異なるが、ジェスキールもまた巧みなストーリーテラーであることを実感した瞬間だ。
勢い良く飛び出してきたのは、ファーストシーズンから一貫して続けているショート丈のフレッシュなスタイルだ。ベースは、1970年代のムード。そこに“ブリティッシュ・ユニフォーム”“ロマンティック”“サイケデリック”の3つのキーワードが織り込まれている。
レトロな制服のような大きなラペルの紺ブレには、ロマンティックな白いレースのブラウスを合わせる。レースはコットンやレザーなど複数の素材からできるなど手が込んでおり、グログランテープ風の紐もよく見るとレザーだ。サイケなムードを盛り上げるのは、ハイウエストのベルベットの柄パンツや、艶やかな赤や黒のイール使いのドレス、どこか和を感じるプリントの組み合わせなど。
ホワイトデニムにプリントしたモチーフは、ヘッドフォン、マッチ、マニキュア、ドライヤーなど女性の日用品。ただし電話はスマートフォンではなく、黒電話なところがレトロだ。