素材のランクアップは、14-15年秋冬から始まっていた。15年春夏は、その特性を生かした多様なシルエット提案でスマッシュヒットを繰り出し、一歩前進した印象が強い。そして15-16年秋冬は、レザーやスエード、ムートンなどの高級皮革、ベロアなどの大人っぽいマテリアルにも挑戦。襟と袖をニットで切り替えたステンカラーコートやブルゾン、トレンチコートなど、“大人素材”で“大人アイテム”を生み出した印象だ。
“大人”感は、メンズデビュー当初からの大きな特徴だったジェンダーレスなムードを希釈化、つまり薄めているところからも伺える。フレアシルエットのパンツや、同じようなフォルムの袖を持つVネックのシャツなど、引き続きフェミニンなムードは随所に散見されるが、チューブトップやブルマーなどで性差を大きく揺さぶってきたデザイナーとしては、正々堂々のマスキュリン。ただコートからシャツまで、あらゆるアイテムの胸元を彩った、まるでブローチのような飾りボタンは引き続き、ジョナサンが提案し続ける男女で共有できる「シェア」アイテムの魅力を訴える。
皮革素材を多用し大人っぽく進化したせいか、「ロエベ」との境界線はちょっぴり曖昧になった。数週間後に発表する「ロエベ」の15-16年秋冬メンズ、ジョナサンにとってのセカンド・シーズンが、どう変わるのか楽しみだ。