軽やかに昇華したトレンドは、レイヤードと、スエードやファーのコートだ。2015年春夏のグランジの大ブレイクはいまだメンズに強い影響を与えており、15-16年秋冬はロンドンからピッティに至るまで、どこもレイヤードスタイルの大行進。丈の異なるアイテムを組み合わせ、最後に極地探検家のようなビッグコートかラグジュアリーなファーコートを羽織るスタイルが頻出している。「マルニ」のスタイルも、レイヤードだ。しかし、そのレイヤードは、他と一線を画して独特。コンスエロは、迫力たっぷりでランウエイにも映える、ファーのノーカラーコートをキーアイテムに据え、それを、まるでローブのように軽やかにスタイリング。「マルニ」らしいカラフルなボタニカルプリントのシャツやフワフワのニットなどとスタイリングした。もちろん、コマーシャル性も考え、同じノーカラーだがファーを使わないチュニック丈のようなコートやブルゾンも用意。袖あり・袖なしなど多様なバリエーションをそろえていることからも、このアイテムを中心に、新たなレイヤードスタイルを生み出そうという気構えが伺える。定番のシルエットを微調整し、相反するアイテムと組み合わせることで、全体のスタイルを少し新しく見せようという他のブランドに対し、新鮮な洋服を提案することで一歩先行した印象だ。
もう一つ軽やかに昇華した正装については、「ハズす」という表現がふさわしいだろう。男の定番のチェック柄は、シャツにもジャケットにも、コートにものせられたが、いずれもピッチや格子の大きさを変え、それをレイヤードすることでちょっぴりの違和感をプラス。そもそもスーツスタイルのほとんどは、ジャケットとパンツを異なる生地で構成している。ジャケットそのものは、コンパクト丈ながら、ボタンの位置がかなり上。こうした少しの変化で独特の可愛らしさを加えるアプローチは、今シーズンも健在だ。ボトムスは、リラックステーパードから太めまで多種多様だが、ユニークなのは、裾にスリットを加えたフレアだ。
ブリーチでニュアンスカラーに仕上げたニット帽はキュート。対してジップアップのダービーシューズは厚底で逞しい。柔と剛の使い分けにもたけている。バックやバックパックは、モコモコのゴートファーに覆われた。