ファーストルックは、肉厚のカシミヤで作った丈が長めのワークブルゾン。ジャストウエストの位置で生地を思いっきりつまみ寄せ、まるで砂時計のようなフォルムを生み出した。しかし、その砂時計は、力でグイグイ押すイタリアンブランドのフォルムとは大きく異なっている。密度の高い生地を選んだとは言え、やはりカシミヤは柔らかい。砂時計のフォルムは、ふんわりウエストをマークするが、決して窮屈には見えない。裾をベルトで絞ることでテーパードに仕上げた、リラックスシルエットのパンツも全体を優しい雰囲気にまとめる名わき役だ。
その後も出てくるのは、ウエストをギュッと絞ったピークドラペルのチェスターコート、袖をセットインしたサルトリア仕立てのタートルニット、レザーで作った漆黒のプルオーバーなど、聞く限りは逞しそうなアイテムばかり。しかし、同じくダブルフェイスのカシミヤで仕立てたり、ローゲージでふんわりまとめたり、ライナーにムース素材をボンディングしたりで、いずれも機能的で軽快。ロング&リーンなのにイージーという、理想のシルエットに到達した。
思い切ったフォルムは、確固たる想いや自信の現れなのだろう。フィナーレで力強く片手を上げ挨拶したパリアルンガは、素地選びの段階からフォルムを描き、それを実現することができる人物のようだ。首回りのレイヤードや、裾に向かって細くなるテーパードシルエットのボトムスなど、トレンドにも敏感。アクセサリーのバリエーションが増えれば、パリアルンガの「ジル・サンダー」は、安定飛行状態に突入できそうだ。