コレクションは今回も、いたってシンプルな装いに終始した。中性的な雰囲気を漂わせるモデルたちが、紳士服の基本であるタイドアップ姿で各部屋を足早に歩いてゆく。リッチブラックと深いネイビーを核にしたワントーンのスタイルが中心だ。アクセントといえば、ハイテクスニーカーと四角いナード風のアイウエア程度。興味深いのは、プレ・フォールのウィメンズも同様にダークトーンのマスキュリンなルックが多いこと。メンズと共地のナイロンタフタ(ブランドで長く人気を博すリュックと同じような、光沢のあるナイロン素材)、ブランドの定番キッドモヘア、それにフランネルのトレンチコート風のワンピースなどで呼応した。
ジュエリーは一切まとわず、片手にはメンズライクなバッグ。一方のメンズでは、テーラードコートのサイドや背面に走らせたプリーツが、ウィメンズのスカートを連想させる。素材と色のみならず、アイテムや洋服のディテールも男女でリンクさせた。
性差を超えた洋服は人を“飾る”ことはなく、シンプルだからこそ、服に頼らずその人自身の個性を強く浮かび上がらせるのだろう。ウィメンズのワンピースでは、背面を大きく開いて肌をあらわにしたデザインや肩に付けたリボンなど、彼女たちが女性らしさという隙を見せるとハッとさせられる。しかし、それもメンズライクなコートを着てしまえば気づかないほど、前面はシンプルでクリーン。メンズの半袖トップスからのぞくシャツの裾は、計算外のレイヤードをイメージさせた。こうした個性や偶発的に生まれたようなスタイルは最小限に留めたが、シンプリシティに徹する中で逆に印象を強めることになった。