ファッション

「ヴァレンティノ」2015-16年秋冬パリメンズ 60’sジオメトリックのワードローブが浮かび上がらせた現代の美学

 クラシックなワードローブに美しい花々やバタフライ、動物のモチーフを刺繍でのせ、ファンタジーが広がった2015年春夏コレクション。一方の今季は1960年代に広がったキュビズムの思想からインスパイアされ、構築的な美しさを追求した。ピースフルなモチーフの代わりに洋服に溢れたのは、豊富なカラーパレットの幾何学模様。「ヴァレンティノ」ならではの繊細なクラフツマンシップで洋服に落とし込み、メゾンの考える美の解釈とその奥行きの深さをさらに広げた印象だ。

 キュビズムの思想は、さまざまな角度から見たモノの形を幾何学模様によって描くのが特徴。シャープなセットアップに合わせたダブルフェイスのカシミヤコートには、ボルドーやグリーン、ネイビー、グレーの大きさが異なるジオメトリック模様をミックス。クルーネックセーターの胸元やロングコートのアクセントに付けたレザーパッチポケットは、平面的な作風をオマージュしているのだろう。大きなファスナーのディテールを加えたフードブルゾンなどで、スポーティーな要素もプラス。アストラカンファーとカシミヤを切り替えしたダッフルコートなど、今季もラグジュアリーとカジュアルの絶妙なバランス感覚を発揮した。

 強い直線のモチーフと色の組み合わせにもかかわらず全体がクリーンな印象にまとまっているのは、優しく体を包むオーバーサイズのシルエットに加え、インターシャやパッチワークなどの高度なテクニックで軽さを維持しているから。エフォートレスなマインドとアクティブな実用性を備えた洋服こそ、現代的な美しさであることを改めて感じさせる。暗くなりがちな秋冬の洋服に色が加わったことで、テーラードの表情も豊かに広がった。後半に登場したさまざまなモチーフを幾重に重ねて柄を描いたジオメトリックコートは、細かく繊細にパッチワークして仕立てたもの。クチュリエならではの圧倒的なクラフツマンシップで、メンズのワードローブをさらに進化させた。

関連タグの最新記事

最新号紹介

WWDJAPAN Weekly

リーダーたちに聞く「最強のファッション ✕ DX」

「WWDJAPAN」11月18日号の特集は、毎年恒例の「DX特集」です。今回はDXの先進企業&キーパーソンたちに「リテール」「サプライチェーン」「AI」そして「中国」の4つのテーマで迫ります。「シーイン」「TEMU」などメガ越境EC企業の台頭する一方、1992年には世界一だった日本企業の競争力は直近では38位にまで後退。その理由は生産性の低さです。DXは多くの日本企業の経営者にとって待ったなしの課…

詳細/購入はこちら

CONNECT WITH US モーニングダイジェスト
最新の業界ニュースを毎朝解説

前日のダイジェスト、読むべき業界ニュースを記者が選定し、解説を添えて毎朝お届けします(月曜〜金曜の平日配信、祝日・年末年始を除く)。 記事のアクセスランキングや週刊誌「WWDJAPAN Weekly」最新号も確認できます。

@icloud.com/@me.com/@mac.com 以外のアドレスでご登録ください。 ご登録いただくと弊社のプライバシーポリシーに同意したことになります。 This site is protected by reCAPTCHA and the Google Privacy Policy and Terms of Service apply.

メルマガ会員の登録が完了しました。