基本は、同アイテムの重ね着や上着の裾からはみ出すインナーのアクセントなど、他でも盛んに見かけるレイヤードのテクニック。だがこのブランドでは、実に豊富なアイデアのバリエーションに驚く。アウターの重ね着を例に挙げると、Aラインのトレンチコートには上にケープを重ねて、より美しくフレアのボリュームを強調。ステンカラーコートとノーカラーコートのレイヤードは肩のエポーレットで固定することで、取り外せばどちらも単体で着ることが出来るよう、実用性も意識した。新たなプロポーションを生み出したキーアイテムは、キルトスカートやラップスカートだ。中に合わせたタイトなボトムスと共地で仕立て、グログランテープで留めたりルーズに巻きつけたり。コンパクト丈のブルゾンやテーラードコートになじみ、Iラインの絶妙なシルエットを生み出している。他にも、かなりワイドなバミューダパンツ、胸元をリボンで結んだキルティングのスタンドカラージャケットなど、民族衣装から着想したエスニックの要素がテーラードに抑揚を加えた。
一番の魅力は、どこかに必ず“光”をまとっていること。ワークウエア由来のリフレクターを随所に走らせたコートから始まり、光沢を放つ肉厚なシルクのセットアップなど、徐々にクラシカルな雰囲気を強めていく。中盤から後半にかけては、インドの手刺繍によって、豪華絢爛の輝くワードローブが登場。繊細に縫い付けられたメタルの飾りやビジューが、ライトの光に反射してきらめいた。リアルに着られるエフォートレスなマインドとファッションが持つファンタジーのどちらも贅沢に盛り込み、今季もパリメンズの中で圧倒的な存在感を見せつけた。