とは言え、その表現方法で圧倒的なバリエーションを見せるのが、「ルイ・ヴィトン」のクラフツマンシップだ。ファーストルックの縄目は、ブラッシングしたウールに縄目をジャカードで織り込んだピーコート。その後縄目は、アルパカのニットにフロッキープリント(細かな繊維をのせるプリント技法の一つ)で描かれたり、コルクをレーザーカットしてカシミヤのニットにのせたり。ファーを縄目モチーフに刈り込んだ、スーパー・ラグジュアリーなアイテムも提案した。
縄目は、アクセサリーにも加わっている。「ルイ・ヴィトン」のアイコンであるモチーフの一つ“ダミエ(市松模様)”のボストンやトートバッグには、同じく市松模様に並んだ縄目のモチーフを上からプリント。自社の、しかも“モノグラム”に並ぶアイコニックなモチーフの上に、他人のアイコンモチーフを重ねるキムの発想と、それを許した「ルイ・ヴィトン」のふところの深さを感じざるにはいられない。
脱構築的なシルエットが特徴だったネメスへのオマージュは、ボトムスにも現れている。さすがに洋服を一度完全に解体し作り変えたようなシルエットは見られなかったが、たとえばウールとモヘア、シルクを混紡した光沢感のあるパンツは、まるでデニムのような仕様で、ロールアップ幅も太め。ネメスが愛したシャープなシルエットを、柔らかな高級素材で作り変え、攻撃的なテイストを抑えている。また、ともに日本を愛していることから、日本のデニムを用いた商品も盛りだくさんだ。