モデルの顔には、強いパンチをくらってできたアザや皮膚を縫った痕。頭にはシルバーのワンポイントヘアーを差し込み、ワイドパンツに手を入れた姿がちょっとワルそうなブラック・ジャックのよう。コートの中からシャツの襟が片方だけとびだしていたり、無造作にアウターを重ねていたりするのは、鏡を見ずにぶっきらぼうに洋服を合わせたからだろうか。ジャケットの肩部分には、ファスナーが添えられぱっくりと開いていたり、一度切り刻んでから縫い合わせたようなディテールを加えたり、“壊す”アプローチが満載だ。
後半に行くにつれ、徐々に色が増えてくる。半身ずつ異なるメルトンで切り替えしたジャケットや、ピッチの異なる編地をつないだニットなど、昨今の潮流であるパッチワークやハイブリッドを多用した。治療困難な難病を治す名医のブラック・ジャックにどんな思いを馳せたのかはわからないが、定番のベーシックを分解して組み立て直したことで原点のスタイルは若返り、現代の若者に魅力的に映ったことだろう。