メゾンを象徴する色であるショッキングピンク一色の会場で、コーラス隊がゴスペルにアレンジした「ボレロ」を歌う中でショーが進む。ノスタルジーを感じさせるのは、1930年代調のシルエットやレトロな色使いから。星柄に切り取ったシルクオーガンジーを大量にパッチワークしたブラウスに白いマスキュリンなワイドパンツ、鏡プリントの鮮やかな青のジャンプスーツ、金刺繍で飾ったシルクのブラックスーツなどが並ぶ。
ジャン・コクトーやダリとの関係が深くファッションとアートをつないだ創業デザイナーの意図はシュールなプリント柄や針山風アクセサリーなどに反映されているが、どこか時が止まったかのような印象は拭えない。決定が待たれる新クリエイティブ・ディレクターには豊富なメゾンコードを生かしつつ、現代のファッションとして昇華する力を期待したい。