ファッション

「ヴィクター&ロルフ」2015年春夏オートクチュール 溢れ出る情熱と少しのアイロニー

 ショーが進むにつれてサイズがどんどん大きくなる服。フィナーレ近くでは頭に載せた麦わら帽子、というより麦そのものの装飾があまりに大きいため、ランウエイ上で2人のモデルがすれ違うことができず、片方のモデルが脇に寄って立ち止まり道を譲る。会場からはその光景にクスリと笑いが起きる。モデルの表情がいたって真面目な分だけ、その絵はシュールだ。

 「オートクチュールこそが我々のクリエイションの原点」と語る「ヴィクター&ロルフ(VIKTOR&ROLF)」のロルフ・スノエレンとヴィクター・ホルスティン。2人はショーを観る者、服を着る人に対するサービス精神が豊富であると同時に、そのスタンスはいつでも少しアイロニーのベールに包まれている。トレンドとは一線を画すオートクチュールではその魅力が一層引き出される。

 インスピレーション源は画家のフィンセント・ファン・ゴッホ。ゴッホの活力溢れる田園描写に宿る生のエネルギーにインスパイアされたという。リリースには「私は、自分の作品にも心と魂を込める。そして制作過程で我を失う」というゴッホの言葉が引用されている。牧歌的なAラインのベビードールドレスや頭にのせた素朴な麦わら帽子は、ショーが進むにつれて少しずつサイズを増し、最後には服と帽子が一体化する。

 伝統的なバティック染めを用いた花柄は途中から立体的な装飾へとドラマチックに変化してゆく。女性ヴォーカルが不気味にささやき歌う、映画「ローズマリーの赤ちゃん」のテーマソングを聞きながら服を見ると、デザイナの2人の内面がほとばしり出てきているかのようにも見えてくる。

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