真っ黒なインビテーションカードは、角度を変えるとスポットライトが当たったように“LIGHT”の文字が浮き出るような仕掛けで、ホログラムでできている。シートは、カーブするように配置され、その椅子の上にあるプレスリリースには、「闇を照らせ。そこにあるものを見るために。服を照らせ。そこにないものを見るために」と書かれている。
冒頭は、真っ黒な闇にスポットライトが当てられたかのようなデザインの服。モデルの顔や指先、耳の奥まで真っ黒に塗られていて、黒い洋服の中心部がサークル状に白く浮き上がっている。グラデーションのジャカード織りやデジタルプリント、ゲージと色をグラデーションで編んだニット、メルトンとアランニットをニードルパンチでつなげたもの、グラデーションでパッチワークしたものなど。その手法はさまざまで、いずれも真っ黒な闇に光が当たったようなデザインだ。また、パターンも正円からひかれていて、丸いシルエットも特徴だ。
中盤は、光の円が徐々に小さくなっていく。その表現も白い洋服を黒で塗りつぶすような表現に変化する。手書きで塗りつぶしたかのようなランダムな線画をフロッキー加工したり、フェルトをレーザーカットしたり。黒いリボンやテープを過剰に刺しゅうしたものもある。
後半は真っ黒の服が登場する。ただし、特殊な光が当たると、瞬時に柄が浮き上がってくる。チェック、千鳥格子、花などその柄と色は多様だ。
ラストルックのモデルは、ランウエイに設置されたブラックボックスの前に登場する。箱からはドット柄が浮き出て、箱と同柄が潜んでいる服は、光に照らされると柄が浮き出てくる。その洋服は背景と同化して消えていく服を見せた。
「“影”をテーマに創作活動を続けたら“光”が気になり始めた。前回のように紫外線が当たると徐々に服の色が変わるのではなく、“瞬間性”をポイントに方法を探した」と森永邦彦デザイナー。ブラックライトの紫外線があたると瞬時に色が変わる染料を用いたという。前回とは全く異なる新しい手法で、驚きのある美しいコレクションを披露し、進化を見せた。