色鮮やかで遊び心のあるデザインで、前向きなメッセージを発信してきた「ケイト・スペード ニューヨーク(以下、ケイト・スペード)」。同社の「喜びが人生を彩る」という理念は、商品だけでなく社会貢献活動にも表れている。ルワンダで取り組む、現地の女性のエンパワーメントを目的としたプロジェクト「オンパーパス」は今年で10年目を迎えた。今後さらに世界中の女性たちの活躍を応援するため、土台となるメンタルヘルスの支援を強化する。
ルワンダの女性支援から10年
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同社の社会貢献活動の原点である「オンパーパス」プロジェクトは、内戦で荒廃したルワンダの女性たちの支援を目的に2013年に始まった。「ケイト・スペード」のチームが手工芸の伝統を誇るマソロ村を訪れた際に、現地の雇用を生み出す工場を設立できないかと考えたのが始まりだ。地元の女性職人たちの協力を得てアクセサリーメーカーの現地法人アバヒズィ・ルワンダを設立し、シーズナルコレクションの「オンパーパス」の製造拠点として現在では250人以上の地元の女性たちを雇用し、医療や教育へのアクセスの提供など包括的なエンパワーメントを続けている。
リズ・フレイザー最高経営責任者(CEO)兼ブランドプレジデントは、プロジェクトが10周年を迎えた節目にルワンダを初訪問した。アバヒズィ・ルワンダの工場を訪れ、現地の女性たちと交流したフレイザーCEOは、「このパートナーシップが彼女たちの生活やコミュニティーに与えた真の影響を目の当たりにした。ここでの活動は、私たちが社会的にインパクトのある活動を広げていく上で、非常に重要な役割を持つ」と語る。
健全なメンタルヘルスを
保つための支援を強化
18年に創業者のケイト・スペードが自殺により他界した出来事は、同社に「世界中の女性のメンタルヘルスをサポートする」というコミットメントの重要性を再確認させた。「オンパーパス」に加え、14年に設立したケイト・スペード ニューヨーク財団と「ケイト・スペード」ブランドを通して世界の非営利団体と提携しながらメンタルヘルスにまつわる啓発活動や資金援助に力を入れる。フレイザーCEOは活動の意義をこう語る。
「私たちは、健全なメンタルヘルスが女性と女の子たちの長期的な活躍には欠かせないと信じている。しかしまだまだ支援は薄く、“公には話さないこと”という誤解も抱えている。私たちは、『喜びが人生を彩る』という理念の下、お客さまがより喜びに満ちた人生を送れるよう支援することを約束したい。喜びは内面から生まれるもの。健全なメンタルヘルスを保つことが、喜びを感知する能力や活動全般のエンパワーメントにつながることを身をもって体験してきた。私たちの使命は、メンタルヘルスをアプローチの中心に据え、世界中の女性と女の子たちに力を与えることだ」。
メンタルヘルスの分野の研究を前進させるため、22年には世界の女性リーダーとタッグを組み「ソーシャルインパクト・カウンシル」を設立した。今年は日本からもジェンダー・エンパワーメントの第一人者である熊平美香がメンバーに加わった。フレイザーCEOは、「これはポジティブな変化を推進し、文化を変える提唱者によるパワフルな集団で、グローバルな視点を持つことが重要だ。私たちは女性の人生とエンパワーメントにおけるメンタルヘルスの重要性を発信すると同時に、偏見をなくし、女性の歩みをサポートするためのリソースを提供・促進することを目指す」と意気込む。
女性のエンパワーメントと
メンタルヘルスに関する
グローバルサミットをNYで開催
「ケイト・スペード」は9月19日に、ニューヨーク・ハドソンヤードのタペストリー本社で女性のエンパワーメントとメンタルヘルスに関する第2回グローバルサミットを開催した。当日は第78回国連総会に合わせて世界各国から集まったメンタルヘルスやジェンダーに関するオピニオンリーダーが来場し、多くの女性たちが聴衆する中、ディスカッションが行われた。
同サミットは女性のメンタルヘルスとエンパワーメントに焦点を当てたもので、現代社会において女性がより良好なメンタルヘルスを築くことが女性のエンパワーメントの基礎となることについて言及した。さまざまなデータから、女性は男性に比べ社会的、政治的、構造的、生物学的に不利な立場に置かれていることが分かっており、これらの疎外感が女性のメンタルヘルスに悪影響を及ぼしていることも実証されている。そうした結果を踏まえ、「ケイト・スペード」はすでに女性たちが社会的に受け入れられる環境づくりや、経済資源へのアクセスの確保、教育、差別や暴力からの解放、継続的に良好なメンタルヘルスを築けるような経済的支援やコミュニティーの創出を行ってきた。
メンタルヘルスの提唱者や財団関係者、大学教授など、世界中から集まったオピニオンリーダーのうち日本からは熊平美香・昭和女子大学キャリアカレッジ学院長が参加し、パネルディスカッションに加わった。日本のジェンダーギャップ指数が125位と世界の中でも低い数字となっていることに触れながら、「世界中から女性たちが集まりメンタルヘルスやエンパワーメントについて話し合えるレベル感が素晴らしい。日本でも女性のエンパワーメントはトレンドになっているが、まだこのレベルで話し合える場は少ないし、女性が抱えるメンタルヘルスの負担が大きいということを認知するレベルまで行っていない状況でもある。少しずつ変えていきたい」と語った。(TEXT : REIKO SUGA)
英・研究機関と連携で報告書を発表
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「ケイト・スペード」は、メンタルヘルスに関するイギリスの研究機関「プロスピラグローバル」と提携し、女性エンパワーメントにおけるメンタルヘルスの重要性をまとめた報告書を発表した。
報告書では、良好なメンタルヘルスが人生における選択肢を増やし発信力の強化につながる土台であることを示す概念を提唱する。99カ国のジェンダー問題に取り組む組織にアンケート調査を行い、97%がこれを支持した。一方で、従来のエンパワーメントの文脈では身体的健康や教育、経済支援などに重点が置かれ、メンタルヘルスにまつわる支援が十分に行き渡っていないことも分かった。社会の偏見やそれによって資金が十分調達できないことが大きなハードルになっている。後半では各国の先進事例を取り上げ、組織内で取り入れられる具体的なサポート方法などを紹介している。
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