その後もハイウエストのスキニーパンツと台形型ミニスカートをキーアイテムに1960年代風のスタイルが続く。スキーウエアを彷彿とさせるスポーツのエッセンスも加えて、アクティブさも添える。いずれもスタンダードアイテムを素材や色、柄やディテールでちょっとした遊びを加えて、フレッシュな印象へとつなげている。例えば、レースはオーガンジーとテクニカルレースを合わせたり、ワッフル加工のエンボスのシルクでドレスを仕立てたり。都会的でありながら、アクティブな女性が新生「カルヴェン」ガールのようだ。イメージしたのは「パリに暮らすロンドンガール。60年代後半のエレクトリックなスタイルと活動的なパリジェンヌのタイムレスなエレガンスを合わせ持つスタイル」だという。
その意図についてショー終了直後のバックステージでマーシャルとカヨドは、「私たちの持っている『カルヴェン』のイメージは、モダンでアクティブ、そしてフレッシュ。『カルヴェン』が特に名声を高めた1960年代に思いをはせた。その頃にパリに憧れてやってきたエトランジェ(異邦人)が、パリの雰囲気を吸収してパリジャンになっていくようなイメージを大切にした。その人々の憧れを具現化したのは、当時の『メゾン カルヴェン』であり、ジェーン・バーキンだと思う。今回のコレクションはそのパリへの憧れを形にしたもの。ロマンティックでありながら、エレガントでナチュラル。パリジャンでありながらパリジャンでない。そんなイメージ」と語った。
若々しくウエアラブルなアイテム(スキニーパンツはアジア市場では少々難しいが)をそろえた新生「カルヴェン」に、前アーティスティック・ディレクターのギョーム・アンリが手掛けていた時のようなインパクトはない。とはいえ、インパクトがあるアイキャッチなものはマーケットを限定してしまうこともある。“コンテンポラリー”ブランドとしてビジネスの拡大を狙う「カルヴェン」は、インパクトのあるコレクションよりもパリのエッセンスが感じられるウェアラブルなコレクションを必要としていたのかもしれない。
マーシャルは「ジバンシィ バイ リカルド ティッシ(GIVENCHY BY RICCARDO TISCI)」のプレタポルテとクチュールのニットウエアのデザイナーを経て、直近では「アイスバーグ」のクリエイティブ・ディレクターを務めていた人物。カヨドは、「マーク ジェイコブス(MARC JACOBS)」を経て「ジバンシィ バイ リカルド ティッシ」でシューズとアクセサリーラインを手掛けていた。