ファッション

「ロエベ」2015-16年秋冬パリ ミニマルでもなくボリューミーでもない新しいプロポーションで見せるモダンウエア

 確信に変わった。ジョナサン・アンダーソンが新しい“ラグジュアリー”を提案し、けん引していくデザイナーの一人であることを確認したショーだった。

 会場は前回同様のパリ・ユネスコ本部の石庭。イサムノグチと重盛三玲が手掛けたモダンな空間だ。朝特有の凛とした冷たい空気が流れ、心地よい光が差し込む。ファーストルックは、サーモンピンクやベージュ、青や茶に染めたナッパレザーをつなぎ合わせたトップスにヘリンボーンのワイドパンツをコーディネート。手にはさまざまなピンクで染めたパズルバッグを持ち、ウエストはエメラルドグリーンのカットアウトベルトでマークする。ミニマルでもなくボリューミーでもない、絶妙なプロポーションバランスで見せるアートフィーリングが感じられるモダンウエアだ。ワイドパンツとジャストフィットのタートルネックをキーアイテムに、ボリュームアウターやドレスを重ねたスタイルが続く。カラーパレットは、エメラルド、赤、ターコイズ、イエローといった鮮やかな色に加え、ゴールドやシルバー、ヌメッと光る黒といったシャイニーカラーで、ビンテージウエアを彷彿とさせる。そのキワドい色と、ニュートラルカラーとを合わせてモダンな印象へとつなげている。配色の妙と、図形を重ねたようなグラフィカルな柄を差すことで、アートフィーリングを助長している。「前回思い描いた女性の人生の異なる側面を描いた」とジョナサン・アンダーソン。「現実的に未来を志向する人のための機能的なアイテムを加えた」とつけ足す。インスピレーション源は“サイエンス”。実用的でありながら、モダンな個性を演出するための日常着を用意した。

 ジョナサンが“ジュードーパンツ”と呼ぶワイドパンツとドレスのみで見せた前回に比べて、前後で素材を切り替えたミッドカーフ丈のプリーツスカートや数学的図形柄をのせたミニスカートなどアイテムのバリエ—ションもやや増えた。バッグは、レディライクなショルダーバッグ“バルセロナ”が新登場。クロージャーもレザーで仕立てたタイムレスなデザインだ。

 絶妙なボリューム感のフォームと、ビンテージウエアをほうふつとさせる色や柄、ボリュームコントロールしたスタイリング、「ロエベ」の職人技術で作るコレクションは、モダンでありながら華やかさをも感じさせる。それは、パリ前半を終わってみてどのブランドよりも新鮮に映り、新しいラグジュアリー・ファッションの方向性を示唆するものだった。

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