ショーは大きく4つのパートで構成される。冒頭は、黄色やピンク、紫、赤といった鮮やかな色と黒のバイカラーで染めた3Dプリーツのシリーズ。凹凸の影に色を乗せて表現した。チェスターコートやジャケット、スカートをボリューミーに仕上げている。中盤は、表面がふわふわしたテクスチャーの立体的な素材を用いたグリッド柄のシリーズ。これは二重織りのジャカード技術を用いたもので、暖かみを表現したかったという。後半は、幾何学模様に多彩な色をのせたウエアが並ぶ。地層を想起させる細かいボーダーをグラフィカルに見せるプリーツにはじまり、雪の結晶からインスパイアされたという多面体のテキスタイルまで、黒を効果的に用いた奥行きのある表現で、色のパワーを表現した。
ショーのラストは単色のシンプルなトップスに同色のタイトなミニスカートをコーディネートしたモデルがランウエイにそろう。突如、モデルはいっせいに留めている紐をほどきながら、くるくると回る。花びらが開くように、多彩な色を乗せた幾何学模様のスカートが一瞬で広がるというサプライズを用意してショーの幕を下ろした。
「色の力を伝えたいと思った。洋服にとって色は大切な要素。テキスタイルの力など自分たちの解釈を加えた“色”を表現した」と宮前義之・デザイナー。「常に進化するために新しいことに挑戦しているが今回は、色が自由使えるようになった。色を黒の中に潜ませたのは、色を引き立たせようと思ったから。光と影の中で色を表現したかった」。
積極的な素材開発で日本の最新技術を引き出し、職人技術を最大限に生かしたモノ作りは、今求められている“サステイナブル(持続可能の意)”なアプローチでもある。布の可能性を広げる取り組みに今後も注視したい。