会場には細い真っすぐのランウエイが用意され、もの悲しいソロピアノの音楽が流れている。ファーストルックは、いくつもの真っ白なコットンの丸い固まり(張りのあるチュールをコットンで包んだもの)をまとったモデル。顔は真っ白に塗られ、べったりとした髪が顔を覆っている。腕は拘束され、身体のラインに原型はなく、その不規則でいびつな形はモンスターのようにも見える。続いて、大きなリボンを飾り付けたふとんにくるまっているかのように見えるものが登場する。細いランウエイですれ違うモデルは、お互いをしっかりと確認し合うように見つめ合い通り過ぎていく。
その後も、身体を骨組みで包み込んだものや、レースをぐるぐる巻きにしたもの、サークルを模したもの、いくつも子ども服がくっついた巨大な布の固まりなど、特異な形状のものから、リボンを無数に飾ったトップスとパンツをコーディネートしたものやウェディングドレスのように見える服までさまざまある。その姿は進化の果ての生物の姿のように感じられる。
カラーパレットは白、黒、ゴールド、エクリュなど。キーディテールは、大小さまざまなリボンで、多用したレースやフェイクレザーでかたどられた。素材は、細いリボンで花の形にアップリケしたものや厚みのあるウール製までほとんどがレースだ。
キーワードは“別れの儀式”。送る側も送られる側もとびきり着飾る、そんな特別な時のための服を用意した。